2Dアクション好きのゲーム日記

ゲームについて書く。2Dアクション多め。

『トランシルビィ』レビュー:「難易度控えめ、面白さ多め」有言実行の探索アクション

 

 

概要

メーカー:フライハイワークス / SKIPMORE / ESQUADRA

プラットフォーム:Nintendo Switch / Steam

初リリース日:2021/12/9

価格:1,500円(税込)

公式サイト:トランシルビィ (Transiruby)

最近の探索アクションは名作揃いですが、気持ちアクション難しめの作品が多め。

できれば、もっと気楽に遊べるものも欲しい……そんな人にオススメしたいのが、こちらの『トランシルビィ』です。

 

本作は『神巫女』や『フェアルーン』を手掛けたSKIPMOREとフライハイワークスのタッグによる作品で、初報が公開されたのは2018年。その頃は2019年発売予定とされていました。

しかし、Steam版が発売されたのが2021年12月9日。元々予定されていたSwitch版はそこからさらに遅れて2022年4月28日の発売となり、初報から追ってた身としてはずいぶん長く待った気がします。

このPVも今見るとエフェクトが少なかったり背景にフィルターがかかっていなかったりして、製品版とはちょっと違って見えますね。

 

↓ 製品版PV

待っていた分、出てきたものはしっかり期待に応える内容になっておりました。

それこそ『神巫女』を遊んで「良いな」と感じた人には合うことでしょう。

というわけで今回は、Switch版でプレイした感想を書いて、ゲームの紹介をしていきたいと思います。

 

サイボーグの少女と相棒ネコAIのゆるゆる冒険譚

主人公はサイボーグの少女"シルビィ"と、その相棒であるAIの"ネーコム"

自宅を兼ねた宇宙船でゴロゴロしていた彼らは、偶然近くで高次元からの"次元落ち"による巨大な次元大陸の出現を観測します。

調査のため次元大陸に降り立つシルビィですが、落下の衝撃で装備の大半が破損。

かくして現地で装備を復旧しつつの大陸探査が幕を開けます。

 

メインビジュアルやデフォルトの立ち絵からはクールな印象も受けるシルビィですが、話し始めると意外と表情豊か。

この顔好き

相棒のネーコムをはじめに、道中で出会う人々との脱力もののゆる~い会話劇が、なんとも心地よい魅力を持っています。

SF風な世界観描写もあり、終盤には結構ヤバめな危機が訪れたりもしますが、キャラのノリは最後までゆるく進行。

一方、画作りとBGMで盛り上がりを演出して、しっかり惹き付ける場面も用意されており、上手いバランス感覚になっています。

 

敵を足場にして進む探索アクション

ゲーム内容は2D探索アクション。

エリアは全部で4つ。それぞれが前後半に分かれており、迷路のようなマップに散らばった50個の"トランチップ"を集めると、扉が開いて先に進めるようになります。

マップ画面を開けばおおよその目的地やトランチップの位置が表示されるので、それを頼りに探索するのが主な流れ。

 

シルビィの主な攻撃手段は、剣による近接攻撃と、エレメントガンによる敵のフリーズ。

エレメントガンで動きを止めた敵は足場として上に乗ることができ、これを活用して道を切り開いていくのが本作の特徴的なアクションになっています。

 

また、その他にも各所に隠されたアイテムコンテナを見つけることで、シルビィの能力を拡張することができます。

印象的なものでは、サイボーグらしい変形機能によるバイク走行モードなど。

弱いザコ敵なら蹴散らせるほか、水上を走れるなど楽しい能力になっています。

トランチップのある所まで行けなくなってきたら、アイテムコンテナのある場所を目指し、新能力を得て探索範囲を広げる……といったように、探索が一本調子にならないアクセントとして上手く機能していますね。

 

「難易度控えめ、面白さ多め」を目指したゲームデザイン

「難易度控えめ、面白さ多め」とは、本作の開発コンセプトとして掲げられているテーマ。

その言葉通り、本作はアクション部分の難易度は低めで、手触りの良さや探索の面白さに焦点を当てて楽しんでもらおうという意図が感じられる設計になっています。

 

道中のザコ敵はそう強くはありませんし、硬めのザコであっても空中下突きやフリーズさせてからの攻撃であれば一撃で倒すことができます。

ちょっとくらいダメージを受けても、フリーズさせてから敵を倒せば30%の確率でHPを1回復することが可能。

フリーズさせた敵からはエレメントガンを撃つためのEPが手に入らないので、なんでもかんでもフリーズさせればいいわけではありませんが、バランスよく敵を倒していけばそうそう死にはしません。

敵を攻撃した時のザクザクしたヒット感の良さも相まって、気持ちよく敵を倒しながらテンポよく探索を楽しめるようになっています。

『神巫女』では大変だった物運び系のギミックも、途中で被弾してもすぐ拾えるようになりました。

 

また、グラフィック面でも地形が視認しやすいよう様々な工夫がされています。

詳しくは下記の記事で非常にわかりやすく解説されていますが、本作は実際に地形把握がしやすく、それによって探索も快適なものになっています。

記事で紹介されていないものだと、落ちた先の見えない位置にトゲや敵が配置されている場所で、背景に警告表示があって事前にわかるようになっていたり。

トゲか敵かの判別もつくようになっているので、対処法もちゃんと分けることができます。
さりげないですが、非常に配慮を感じる良い所ですね。

 

一方、探索マップ上にはちょっとした謎解き要素も散りばめられ、時に足を止めて頭を使う場面もあります。

一見するとジャンプでは届かない高さ……そんなときも、敵の動きをよく見てフリーズさせるタイミングを狙ったり、周囲のパズルを解くことで進めるようになったり。

観察と閃きによって道を切り開いていく面白さも味わえるようになっています。

もっとも謎解き部分もアクションと同様、そう難しいものは用意されていません。

パスワード系の謎解きは必ずすぐ近くにヒントがあるということさえ踏まえておけば、極端に詰まることは無いでしょう。

アクションも謎解きも、一貫した調整で丁寧な難易度曲線が描かれており、全体的にバランスがいいのですよね。

間口を広く、やさしいつくりにはするけれど、簡単なだけの味気ないゲームにはしない、という意気込みを感じます。

 

特にそれがよく表れてると感じたのがボス戦。

アクションの腕前に任せた攻略も可能ですが、攻撃のパターンを見ていかにして弱点を突くか考える謎解き的な攻略法も用意されており、このゲームらしい構成を楽しむことができました。

 

探索は地道な手探り感も強め

ただ一点気になったのが、マップ画面のUI。

マップ画面では地形の表示を切り替えられるのですが、表示が小さすぎてかなり見づらいことになっています。

同じ所を何度も行ったり来たりすることもあるゲームなので、一度通った所はなるべく楽に進みたいものですが、道がよく見えないせいで徒に迷うこともしばしば。

ここはもっと親切というか、利便性の高いものでもよかったのではないかと思います。

 

また、基本的にクリアまでは未入手のトランチップやアイテムボックスがある場所を目指していれば、多少迷うことはあっても手掛かりが無くなることはないのですが、100%クリアを目指すと途端に不親切になります。

収集要素であるメガトランチップやダーククォーツなどは、入手済みのものも含めてマップ上で一切の情報がありません。

どこにあるのか、どれを取ったのかもわからない状態でクリア済みのエリアをしらみつぶしに再探索するのは、流石にちょっと古典的すぎると感じてしまいます。

迷子のドラモスも含め、全体的にコンプ報酬がしょっぱくて達成感が得られないのもマイナスポイントです。

いや、私はもう少しヒントがあっても良かったと思う!

他にもファストトラベルポイントが少ないとか、一方通行な構成の箇所が多いとか、細かいところで不満もあります。

先にも書いた通り、通常クリアまでは程よい誘導として上手く機能しているのですが、100%クリアとなると不親切さが目立ち始めるのですよね。

地道で手探りな探索が好きな人なら問題ないかもしれませんが、個人的にはもう一押しマップUIに親切さが欲しかったところです。

 

総評

ゆるい掛け合いが魅力のストーリーや、難易度控えめで手触りの良いアクション、バランスよく配置された謎解き要素などによって、間口の広い探索アクションとして仕上がっています。

まさしく、「難易度控えめ、面白さ多め」という開発コンセプト通りの作品になっており、こうした一貫したテーマを感じられる作品は遊んでいて気持ちがいいものです。

100%クリアを目指すと気になるところも出始めますが、通常クリアの範囲では丁寧な作り込みを感じられるので、気軽に遊べる探索アクションを求める人には、とりあえずオススメしていきたい一作です。