概要
商品情報
メーカー:Virtua Ride System / Neverland Entertainment
プラットフォーム:Steam
初リリース日:2024/4/26
価格:1,500円(税込)
本作は中国発、バーチャルライバーをテーマとしたストーリーとキャラクターに、『ロックマンゼロ』シリーズをリスペクトしたゲームデザインで構成された2Dアクションゲーム。
情報公開当初はストアページの「ロックマンゼロシリーズを継承した」といった文言が物議を醸しましたが、現在は表現が変更されタイトルもぼかされています。
いや、ぼかせてるかなこれ……
マーケティング段階から日本語ローカライズの怪しさを発揮していた本作。
PVで流れてる歌(本編で聴いた覚えがない)の歌詞もよく見たらわりと変な日本語してる。
とはいえロクゼロリスペクトの作品とあれば、ファンとしては見過ごすわけにはいきません。
発売前にやった体験版の感触が悪くなかったこともあり、製品版も買って遊んでみましたが……まぁ確かに悪くはなかったけど、想像の域は出ない感じでしたかね。
初見ハードモードでプレイし、ちょうどいい難易度で楽しみつつ6時間ほどでクリア。
やり込み要素はまぁいいかな……といったところでレビューを書いています。
ちなみにロクゼロのレビューはこちら↓
『ロックマンゼロ』4作品シリーズレビュー:駆ける、跳ぶ、撃つ、そして…たたき斬る! - 2Dアクション好きのゲーム日記
バーチャルライバーがテーマ……なのか?
まず本作、バーチャルライバーがテーマとのことですが作中でバーチャルライバー要素がほぼ無い……無くなかった?
一応、人と人との繋がりによって生じるE.S.Pなる超能力エネルギーの設定になんとなくライバー的な要素を感じますが、あまり作劇に活かされておらず終盤にそれっぽい演出がちょっとあるくらい。
主人公らがライブ配信等をしている様子も特にありません。
バーチャル要素に関しても、最初に「人類を仮想世界に移行させる」云々という話があるので「じゃあ主人公のいる世界が仮想世界なのかな。だからバーチャルライバーなのか」とか思って読み進めてたら終盤で「実はこの世界は仮想世界だった!」ということがさも衝撃の事実であるかのように語られ、かなり混乱しました。
改めて冒頭を読み直したらどうも人々は自分たちのいる世界が仮想世界だとは思っていない、とも取れる内容になっており、ややこしい!
じゃあ結局バーチャルライバー要素って何かと思って調べてみると、主人公が中国の動画配信サイトで実際に活動している配信者らしいってことしか出てきません。
だったらそれは「バーチャルライバーをテーマとした作品」というより単に「バーチャルライバーが登場する作品」では?
本作は日本語対応しており、ゲーム中の日本語テキストに関してはさほど文法的に不自由というわけでもなくちゃんと読める文章なのですが、どうも話があんまり頭に入らないんですよね。
説明不足な設定とか固有名詞が多くて何の話してるのか分からない。
日本語自体はおかしくないけど、一部のキャラ……というかよりによって主人公とオペレーターのメインキャラ2人の口調が独特すぎて集中できないというのもあります。
まず主人公の"相沢加奈"が一人称「うち」はともかく二人称「なんじ」というクセの強さ。
最初は普通に翻訳ミスなのかと思ったくらいですが、他のキャラとは明確に書き分けられており、作中でも口調に言及があって設定にもわざわざ記載されているので正式なキャラ付けの様子。どんなキャラ付け?
一応、作中で口調には理由があると匂わせる描写もありますが、肝心の理由が明かされないのでただただ「変」という印象だけが残ります。
それ以上にヤバいのがオペレーターの"ブルー"で、かわいい顔してますがAIなので性別は無く、でも性自認は男で一人称は「おら」
そして発する台詞の3割くらいに草を生やしているというカオスっぷり。捉えどころがなさすぎる。
全体的に「顔が良いキャラは出てくるけど魅力が全然伝わらないし話もよくわからない」という具合。
単にローカライズの問題なのかな……これって……
リスペクト元の再現度は上々、でもそれだけ
一方でアクション性に関しては、言うだけのことはあり非常に高い精度で『ロックマンゼロ』を再現しています。
射撃、斬撃、ダッシュにジャンプに壁蹴り。
各アクションがスムーズに繋がり、操作性は快適。
チャージショットでザコを蹴散らし、懐に飛び込んで三段斬りを叩き込む。
まさにこれ、というアクションが揃っています。
操作性に優れたロクゼロのコピーができているというだけでも一定の価値は感じられる仕上がりですが、残念ながら本作はそこで止まっていて、本作ならではのオリジナルの付加価値を生み出すには至らない印象です。
というのも本作、主人公の操作性のみならずステージの背景やギミック、地形に至るまでロックマンシリーズで見たほぼそのまんまをお出しされることが多いんですよね。
ある程度組み合わせを変えたりしている部分もありますが、新規性よりは既視感が勝る内容。
一応、全てがロックマン由来というわけではありません。
本作は『悪魔城ドラキュラ』や『ガンヴォルト』の影響も感じられ、空中キックアクションや必殺スキルといったロクゼロには無い要素も組み込まれています。
もろに悪魔城っぽいステージがあったり、ローディング画面やスキル発動時のカットインなどにガンヴォルト的な演出もあったり。
後半出てくる「空中庭園」ステージなどは、ステージ名と序盤の地形を見たときは「またロクゼロ4のコピーか……?」と身構えたものの、空中キックを活かした独自のギミックになっていて安心しました。BGMも良かったし。
ただ……割合の問題でしょうか。やはり全体としてはコピー要素のそのまんまっぷりが強く、独自要素がそれに勝てていないという印象です。
結構、「ただオマージュがしたいだけでは?」というような場面も多いですし。
あと、個人的にロクゼロだと"クワガスト・アンカトゥス"や"デスタンツ・マンティスク"、"フェンリー・ルナエッジ"あたりの素早くダイナミックに動くボスが好きなんですが、本作のボスは殆どが人型ということもあり、そういったテイストは少なかったかな。
最後に細かいところですが、背景と壁の描き分けが微妙で地形が分かりにくい場面が多かったように思います。
インディーのアクションゲームでわりとありがちなんですが、この辺結構老舗メーカーとのノウハウの差が見えるところですよね。
総評
『ロックマンゼロ』をリスペクトしたアクションゲームとしては上々の再現度。
それはつまりスピーディで快適な操作性を実現できているということであり、それだけでも一定の評価には値するところではありますが、それ以上のものは望めない、そんな内容です。
実在バーチャルライバーのキャラゲーという見方であればそんなに悪くはないように思いますが、元がわからないとストーリーにもちょっとついていけません。
もう少しアクションにオリジナル要素があるか、ストーリーに魅力が感じられれば良かったですが、現状だと普通にロクゼロを遊べばいいか……という具合。
ロクゼロを始めとするロックマンシリーズやインティ・クリエイツ作品への「好き」はこれでもかと感じられるので応援したいところではありますが……とりあえず本国で頑張ってくれ!