2Dアクション好きのゲーム日記

ゲームについて書く。2Dアクション多め。

『ENDER LILIES: Quietus of the Knights』レビュー:絶望の世界を美しく描く。丁寧な作り込みとセンスの高さが伺える一作

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終わってしまった世界。終わらない悪夢。残された希望。

 

 

概要

メーカー:Live Wire / adglobe / Binary Haze Interactive

プラットフォーム:Nintendo Switch / PS4 / Xbox One / Steam

プレイ人数:1人

初リリース日:2021年6月22日

価格:2,728円(税込)

以前、Steamの早期アクセス版を友人が楽しそうに遊んでいて気になっていたタイトル。

Indie WorldのPVでも面白そうだったので発売日に即買いして遊んでみましたが、想像以上のクオリティでびっくり。

これはなんとしても取り上げねばならぬとレビューを書いた次第です。

ジャンルとしては難易度高めの2D探索アクション。

自分がこれまで遊んだ中では、アクション部分に関しては『ホロウナイト』、陰鬱でどうしようもないストーリーやBGMの雰囲気は『NieR: Automata』が一番近いかな。

探索率100%までは行ってませんが、それなりにマップを埋めて全てのエンディングを見るところまで遊び、プレイタイムは20時間ちょっと。

今回遊んだのはSwitch版で、一部のムービー中にちょっとした処理落ちはあったものの、それ以外に遊んでいて不備は感じませんでした。ロードも早い!

 

穢れにより滅びた絶望の王国を、黒き騎士と白巫女が征く

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少女"リリィ"が深い眠りから目を覚ましたのは、暗い教会の奥深く。

記憶を失った彼女が目にしたのは、死の雨がもたらした"穢れ"により、全ての人々が不死の"穢者(けもの)"になり果てた滅びの世界。

既に終わりを迎えてしまい、ただただ絶望と苦しみだけが続いている、どうしようもない光景が、そこに横たわっていました。

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残された唯一の救いの道は、リリィの持つ"白巫女"の力。

穢者たちから穢れを引き取り浄化することで、彼らを永遠の苦しみから解き放つことができるといいます。

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かつてあった王国は如何にして滅んだのか。自分は一体何者なのか。白巫女の使命とは。穢れを祓う戦いの先に、希望はあるのか。

リリィは自らを目覚めさせた黒衣の騎士と共に、呪われし王国へと足を踏み入れます。

 

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物語は、各地に残されたメッセージと、浄化の際に人々が見せる生前の記憶によって語られます。

情報は断片的ですが、拾い集めたメッセージはいつでもメニューから確認できるので、比較的物語は追いかけやすくなっています。

各所に残された手記を読むだけで、生前の人物像や、彼らが如何にして苦痛に飲まれ、王国に絶望が満ちていったかを想像できる―――この表現力の巧みさ、情報の散りばめ方が実に見事というほかなく、手記をひとつ読む度にその世界観にぐいぐい引き込まれ、心もどんどん淀んでいきます。

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緻密に描かれたグラフィック表現や、BGMも一級品。

その作り込みには、ある種の執念のようなものを感じるほど。

物語、映像、音楽。その全てを駆使して、陰鬱で狂気と悲哀に満ちた世界を、しかし美しく表現しています。

 

緊張感のある攻防がたまらない高難度探索アクション

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主人公であるリリィは、穢れを引き取り浄化した穢者たちの力を借りて戦います。

最初に可能なアクションは黒衣の騎士による剣攻撃と、大胆なヘッドスライディングによる回避。

剣は三段攻撃となっており、空を斬る鋭い音と美しい軌跡のエフェクトが気持ちいい。ヘッドスライディングには長めの無敵時間がついていてほとんどの攻撃を回避することができたりと便利。

操作性も非常に良好。レスポンス良く、全体のゲームテンポも速すぎず遅すぎない調整で、比較的誰の手にも馴染みやすいのではないでしょうか。

 

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チュートリアルを兼ねた最初のエリアを超えると、その先は様々に分岐した広大なマップを探索しながら進んでいきます。

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マップは村の跡や地下施設、魔女の森、騎士たちの城砦など、いくつかのエリアに区分されており、各エリアにはボスとなる穢者が存在。

彼らと戦い浄化することができれば、黒衣の騎士と同様、引き受けたその魂を呼び出して力を借りることが可能になります。

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そうして新たな能力を手に入れることで、また新しいエリアへ進めるようになる……という、所謂メトロイドヴァニア形式。

探索によってアイテムを収集していくことで、HPやスキル性能を強化したり、補助的な効果を持つレリックの装備を増やしたり……といった要素ももちろんあります。

ちなみに、経験値を得てレベルを上げるといったRPG的な要素もあるにはありますが、レベルアップで強化されるのは攻撃力くらい。他のステータスは前述の通りアイテム収集で強化します。

なので、アクションRPGというよりは純粋なアクション寄りの内容であると考えてもらう方がよいと思われます。

 

難易度は高め。

基本的に3~4発も攻撃を受けたらやられてしまうので、うかつに敵の只中に飛び込んだりすると一巻の終わり。

回復は可能ですが、発動には1秒ほど静止する必要があるため、やはりうかつには使えません。

また使用回数も有限で、道中でアイテムを拾うかセーブポイントに辿り着くまでは回数の回復もしないため、なかなかゴリ押しは効かないつくり。

ボス戦においても、単純に動きを覚えるだけでなく、その時々の相手の様子を見て、上手く間合いを取りながら攻めるか避けるかの呼吸を制する必要があり、ひりつくような緊張感を味わえます。

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シンプルなアクションで立ち向かう序盤のボス戦は、特に『ホロウナイト』に近い呼吸があるように感じた部分。もちろん楽しい。

とはいえ、序盤~中盤はセーブポイントの間隔もそこまで長くもなくちょうどいい位置に置いてありますし、エリアボスの前でも必ずセーブできる親切設計。

ミスした時のペナルティもセーブポイントに戻されるだけで、経験値や獲得アイテムはしっかり手元に残る仕様。

また、セーブポイント間でファストトラベルも可能。未獲得のアイテムが残っているエリアはマップ上でわかりやすく判別がつくようになっているのも、探索を手助けしてくれます。

 

操作性、システム面含め、全体的に難しいながらも快適に遊びやすいよう気配りされているのがわかるつくりになっています。

とはいえ難易度選択などは無いので、アクションが苦手な人には大変な内容かも。

 

多彩なスキルによる戦術が、戦いを更に熱くする

ゲームを進めるにつれ徐々に活きてくるのが、浄化した魂たちの力を借りるスキルの要素。

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手に入れたスキルはY、X、Aボタン(※)にそれぞれ配置するのを1セットとして2セットまで、つまり合計6つ装備できます。

(※)表記は任天堂キー配置。またキーコンフィグはオプションで変更可能

Yには通常攻撃、Xには防御系、Aには遠距離攻撃を入れて、2セット目にはここぞという時のための大技を仕込んで……といった具合に、スキルの組み合わせによる戦術を考えるのが楽しい。

スキルの変更はセーブポイントでのみ可能なので、よく考えて選ぶことが大事です。

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セーブポイントでスキルセットした魂たちが傍に現れる演出が良い……

中盤以降は多数のザコ敵を同時に相手取る場面も出てくるので、動きを止めたり体勢を崩すスキルが重宝する一方、ボス戦ではカウンターが上手くハマったり。

何度もボスにやられながらも、「このスキル、普段使ってないけど意外とこのボスにならハマるんじゃないか?」「こっちの2つを組み合わせたら火力が出そうだな」などといった試行錯誤をするのが、もう面白くってたまりません。

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エリアボスを倒して得る移動用スキルは攻撃スキルとは別のため、移動用スキルのためにスロットを埋めないといけない……なんてことがないのも、親切設計でありがたいところでした。

 

少しでもテンポを崩すとこちらがやられる緊張感の中、隙を見て素早く斬り、反撃が来る前に回避! 予備動作の大きい攻撃には位置を合わせてカウンター! 体幹ゲージを削って崩しを入れたら大技を叩き込む!

中盤の城塞エリアにおける2体のエリアボス戦は正統派な強敵で動きも非常にカッコよく、本作の中でも最高に楽しく難しい良質アクションを味わえた場面です。

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撃破後の追憶ムービーとそれに対する黒衣の騎士の哀悼の言葉も含めて完璧で、ここだけで十分元は取れたな……と思いましたね。

 

終盤のレベルデザインは少々やりすぎ感も

そんなこんなで非常に楽しく、かつ丁寧な作り込みを感じる本作。

正直、中盤を超えて一つ目のエンディングを見るまではケチのつけようもありませんでしたが、真のエンディングを見るために向かった終盤のエリアで、引っかかる部分も増えていきました。

 

まず本作では、アイテム集めを適度に行っていれば終盤になる頃にはHPゲージがかなり長く伸びており、クリア済みエリアに戻った時などはその強化っぷりを認識できる一方、新しいエリアでは「基本的に3~4発程度の被弾で死ぬ」というゲームバランスが最後まで続きます。

すると段々に一回の被弾で削られるゲージ量が増えていき、「えっ? あんなに体力あったのにもう死ぬの!?」というギャップも大きくなります。

どちらかというとゲームバランスではなくUIの問題な気もするのですが、終盤までコツコツと伸ばした長ーい体力ゲージをその辺のザコ敵にごっそり削られて急に死ぬのは、死を唐突に押し付けられるようでやや納得感に欠ける印象も受けてしまいました。

防御系のレリックが揃ってからはダメージ量はだいぶ改善されたものの、それでも被弾による無敵時間がないため連続攻撃でやられることがままあり、そういうときはムムッと顔をしかめることも。

終盤に向かうにつれ段々セーブポイントの間隔が長くなり、ミスした際の戻されるリスクが高まっていったことも、そうした印象に拍車をかけています。

 

とはいえ、それはまぁ高難度のアクションゲームだしそういうもの、と受け止められるのですが、これから書く終盤のエリア構成との組み合わせが結構キツかった。

以下、軽微ですがネタバレを含むので、見たくない人は総評に飛んでください。

簡単に言うと「探索アクションでそういうの、やめてほしいなぁ」という要素がいっぱいあります。

 

 

 

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本作、全体的に画面が暗く、時々足場が見えにくかったりするゲームではあるものの、終盤エリア1はいくら何でも暗すぎる上に、見えにくい暗闇から敵が高速で突っ込んできて前述のような大ダメージを与えてくるのはいかがなものかと思いました。

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ホラー演出として暗くしたい気持ちもわからなくはないのですが、本作の難易度の高さや探索性を思うとあくまで"演出"にとどめておいて欲しかった。

エリアボスもひたすら逃げながらザコ敵を召喚するめんどくさいつくりで印象悪し。

追記:よく調べたら上記のエリアは中盤くらいから入れるので絶対終盤に攻略するとは限らないっぽい。終盤に行ったから難しかったけど、早い段階で攻略した場合は敵の強さも変わってるかも? 要調査なので上記はあくまで参考程度に。

終盤エリア2では視界は改善されたものの、回復手段が限られている中スリップダメージでHPを削ってきてゆっくり探索ができなかったり、ただこちらを混乱させて迷わせるだけの意地悪なマップ分けをしている部分があったりと、高難度を売りにしているとはいえ探索アクションとしてやって欲しくない要素が満載のつくり。

これらの要素があった上で、理不尽さは減らして意外と楽しめるようになっているバランス調整の妙技には目を見張るものの……とはいえ、禁じ手はできれば禁じたままにしてほしかったところ。"あっても我慢できる"からといって、その要素を褒められるかというとそうはならないので……

前述の通り中盤までは非常に正統派かつ遊びやすい味付けだっただけに、終盤で急にせこい手に頼って難易度を上げるようになったことへのガッカリ感もありました。

 

また終盤エリア2はビジュアル面でもかなりキツく、ごっそりSAN値を削られます。

沙耶の唄』をもう少しマイルド&ファンタジー寄りにしたようなのを想像してもらうと知っている人にはわかりやすいと思います。知らない人は調べるな。

音周りでもしっかり精神を追い詰めてくる演出が盛り込まれていて、とにかく普通にホラーが苦手な人や不気味な肉塊が蠢いている映像に耐えられない人はおとなしく回れ右をした方がいいかもしれません。平気な人は全然大丈夫なレベルとも思いますが……

私は『メイドインアビス』くらいなら全然見れるという程度なのですが、本作の終盤は上記のレベルデザインの問題もあってかなり精神を摩耗させられました。

 

レベルデザインにしろビジュアルにしろ、基本的にどの要素も本作全体に散りばめられたものではあるのですが、終盤はそれがエスカレートして色んな意味でキツくなってきます。

 

総評

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アクションゲーム、メトロイドヴァニア作品として飛び抜けた個性は無いかもしれませんが、とにかく完成度の高さで魅せてくる一作。

陰鬱ながらも美しさを漂わせるハイセンスな世界観に、圧倒的な表現力。

苦戦しつつも挑戦をやめられないアクション性に、遊びやすく配慮の利いたシステム。

どこを取っても唸る仕上がりです。

終盤は色々とキツい部分も出てきてちょっと惜しい気持ちになりましたが、全体の出来を思うと許容範囲内。

PVなどを見て何かピンと来るものがあったなら、きっとこのゲームはその期待に応えてくれることでしょう。

オススメ!