2Dアクション好きのゲーム日記

ゲームについて書く。2Dアクション多め。

『深世海 Into the Depths』レビュー:深海の底に眠るのは、未知へのロマンと秘密の歴史

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「深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いているのだ」

フリードリヒ・ニーチェ

 

※追記(2020/5/17):「臨時潜水モード」の感想、据置モードでのグラフィックの印象等について

※追記(20206/29):デベロッパーダイアリー3へのリンクを追加

 

 

ゲーム概要

メーカー:カプコン

プラットフォーム:Nintendo Switch / Apple Arcade

プレイ人数:1人

初リリース日:2019年9月20日(Apple Arcade)

価格:1990円(税込)[Switch版]

公式サイト:https://www.shinsekai-itd.com/ja/

 

電撃的に公開された『Nintendo Direct mini 2020.3.26』で、これまた電撃的に発表・即日配信された本作。

一見、インディーゲームっぽい印象を受けますが、開発はなんとカプコン

聞けば、元々はApple Arcade向けに少数精鋭で作られたタイトルだそう。

独特の雰囲気に惹かれてSwitch版を遊んでみましたが、

ストーリーだけでなくシステム・サウンド面でも深海が舞台であることが上手く落とし込まれていて、なかなか新感覚の探索アクションに仕上がっていました。

 

深海が舞台の新感覚探索アクション

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地表が氷に覆われた世界。

主人公はたった一人、海中に居を構え生活していました。

しかしそんな我が家も、広がり続ける氷壁に飲み込まれてしまいます。

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いきなり家を追われる主人公。かわいそう

押し迫る氷壁から逃れるため、主人公は広く深い「世海」へと足を踏み入れます。

 

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ゲームジャンルは2D探索アクション。

深海の底を目指し、下へ下へと進んでいきます。

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ただし、海は深くなるほど水圧も上がるもの。

より深く潜るために、素材を採取して潜水服を強化しながら進んでいくことになります。

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また、海中には様々な武器や道具も眠っており、それを活用して探索範囲を広げることも。

素材を集めて潜水服を強化し、進めるようになった場所でまた素材や武器を収集して……

というサイクルで進行し、より深く暗い海の底へと潜っていきます。

 

いわゆるメトロイドヴァニア的ではありますが、一般的には鍵のかかった扉や特定のアイテムが必要なしかけを解いて探索範囲を広げるのに対し、本作は「潜れる深度を下げる」という形になっているのが特徴的。

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現在潜れる限界深度は赤い水面のようにして表示されます。水中にもう一つ水面があるのが新鮮な表現ですね。

潜水服が強化されると、この赤い水面がぐいーっと引き下げられる演出が入り、そのとき見えた範囲がそのまま次に探索する範囲になります。わかりやすい。

潜れる深度を一時的に引き下げるアイテムなどもあり、なかなか他にはない遊び心地でした。

 

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進めていくと潜水艦も登場。

潜水艦は制限深度を無視してどこまでも潜航可能。

その代わり細い通路には入れないので、乗ったり降りたりを切り替えながら進んでいくことに。

潜水艦を利用したしかけなどもあり、探索の良いアクセントとして機能しています。

 

キュートな相棒に導かれる言葉なき旅路

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深海の冒険は孤独…かと思いきや、小さな相棒がついてきます。

世海で出会うその相棒は、「潜導」という謎の機械。

こいつが小動物的で、後ろをついてくる姿がとっても可愛いんですよね。

例えるならベビーメトロイドやBB-8的な可愛さ(わかる人にはわかるはず…)

 

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潜導の導きで世海を探索するうち、主人公は他の人間がいた痕跡や、海中で発達したとみられる文明の跡を見つけることになります。

 

自分以外の生き残りはいるのか?

この海の底には何が眠っているのか?

 

その謎を追って深海を目指し潜っていくわけです。

やっぱり海の冒険には謎とロマンがつきものですね。

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海に沈んだ遺跡の描写なども実に「わかってる」つくりで、冒険心をそそられます。

 

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ストーリー描写において言葉は用いられず、背景や各地に残された絵画などから想像・考察を膨らませることになります。

 

全体的に雰囲気重視で、

かわいい相棒ロボ、深海の謎とロマン、

荒廃したSF世界などが好きな人にはたまらないつくりです。

 

ゆったりしつつほどよい緊張感

海中が舞台のため、全編にわたってふわりとした浮遊感のある水中アクションを行います。

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海には攻撃的な生物や危険な機械生物もおり、戦闘では銛のような武器を射出して戦います。

そこまでシビアなアクションは求められず、ゲームスピードもゆったりめ。

アクションゲームが得意でない人も問題ないレベルと思われます。

 

また、周囲のアイテムの位置がわかるソナー機能も備わっており、探索も快適にサクサクと進められます。

 

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そんな中で肝になってくるのが「酸素ボンベ」の存在。

海中での探索は常に酸素を消費するため、ボンベに酸素を蓄えておかねばなりません。

また、ボンベは複数持てばアーマーとしてダメージを肩代わりもしてくれます。

しかしこれは逆に言うと、攻撃を食らうと酸素の蓄えも減ってしまい、時間的にも体力的にも一気に死が近づくということ。

酸素自体はそこら辺で無尽蔵に吹き出していて補充も簡単ですが、ボンベは一度切らすとなかなか拾えない場面もあり、注意が必要です。

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基本的にはゆったりとしたアクションで探索を楽しみつつ、酸素残量の管理や、死ぬときはわりとあっさり死ぬバランスでほどよい緊張感を生み出しており、良質な水中アクションゲームを楽しめます。

 

ただし、やや慣性が強かったり、思わぬところで壁に掴まってひっかかってしまったり、操作性にはややクセがあります。

なかなか思うように動かせないもどかしさは、深海の手強さを表しているとも言えますが、アクションゲームとしてはちょっとイライラすることも。

 

追記(2020/5/17):

クリア後には、「臨時潜水」というモードが解禁されます。

本編が大体10時間程度でクリアできるボリュームに対し、こちらは1周20分前後の専用ステージで、海底までのタイムを競うモード。

難易度は高めで、ルート選択の要素もあり、やり込みがいのあるものになっています。

 

ただし、前述のクセの強い操作でわりとガチ目のアクションを求められるので、あくまで本作を気に入った上で、難易度に物足りないと思った人向けですね。

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最奥で待ち受けるボスが手強いのなんの

 

こだわり抜かれた絶品の音響

本作は、起動してまず最初にこんな文言が出てきます。

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言われるままイヤホンをつけて遊んでみましたが…これは圧巻。

目を閉じて聞いていると自分が本当に海の中にいるのではないかと錯覚するほど、水中の音響が緻密に精巧に再現されています。

具体的には、水中で音が重く深く、くぐもって響くようなあの感じや、ごぽごぽと水が揺れ動く環境音など、誰もが一度は体験したであろう水中のサウンドが、イヤホンから鼓膜にじんわりと響き渡ります。

 

SEだけでなくBGMも名曲揃い。

リラックスできる楽曲が多く、メロディーと環境音とが一体になったサウンドは、デビット・ワイズ氏による「スーパードンキーコング」のサウンドづくりにも通ずるものがあるように感じられ、実に心地よく染み入ります。

 

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また、本作のBGMは場面に合わせて音色や音数が変化するのですが、クリア後のサウンドテストではそれらの設定を細かく切り替えて楽曲を楽しむことができます。

この辺からも、本作の音響に対するこだわりの深さが感じられます。

 

追記(2020/6/29):

開発者が本作の音響について語った以下の動画も必見。

特殊マイクを使って水中で録音した音を再度水中で流して録音したとかとんでもないこと言ってる。

www.youtube.com

 

音響だけでなくグラフィックも良質。

ロマンをくすぐる背景美術はもちろん、深海に棲む海洋生物のモデリングも見事。

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図鑑モードでは出会った海洋生物を観察することもでき、深海らしいデッサンの狂ったキモい生物たちをじっくり見られます。

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隅々まで探索して図鑑を埋めましょう

 今回記事に挙げている画像は都合上全てSwitch携帯モードで撮影したものですが、いずれ据置モードで細部まで観察しながら再プレイしたいですね。

 

追記(2020/5/17):

後日、据置モードでもプレイしてみましたが、携帯モードだとややつぶれてしまっていた細部の描き込みが目に入るようになり、より世海の奥行を深く感じられました。

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据置/携帯モードで印象が変わるゲームは時々ありますが、本作は特にその傾向が高いような。

プレイの際はぜひ「据置モードで、イヤホン又はヘッドホンを付けて」遊ぶことをオススメします。

 

総評

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「アイテムを集めて探索範囲を広げていくアクションゲーム」と書くと、一見何の変哲もないメトロイドヴァニアのようですが、本作は舞台を深海に据え、ストーリー・システム・サウンド全てに深海要素を落とし込むことで、独自の魅力を切り拓いています。

個性的なだけでなく、各部の作り込みやバランス調整も非常に高い完成度。

 

個性的なアクション・探索要素を求めている人はもちろん、深海の冒険にロマンを感じる人の期待には間違いなく応えられる、そんな唯一無二の「深海ゲー」が本作です。

 

酸素ボンベの維持にほどよい緊張感はありつつも、アクションや探索の難易度はそれほど高くないので、雰囲気重視のプレイヤーにも幅広く遊んでもらえると思います。

オススメ!