このゲームに育てられました。
『ロックマンゼロ』シリーズとは
本シリーズは、『ロックマンX』シリーズに登場する"ゼロ"が主人公のスピンオフとして、ゲームボーイアドバンス(GBA)で展開された外伝的シリーズ。通称ロクゼロ。
開発はカプコンおよびインティ・クリエイツ。
現在は『ロックマンゼロ&ゼクス ダブルヒーローコレクション』でゼクスシリーズと併せて遊ぶことができます。
↓ Xシリーズのレビューはこちら。
『ロックマンX』8作品シリーズレビュー:栄光と迷走の歴史。エックスと共に、君は強くなる(前編) - 2Dアクション好きのゲーム日記
元となったXシリーズは、ハードな世界観や初代ロックマンから受け継いだ「答えのあるアクションゲーム」の要素、ダッシュと壁蹴りによるハイスピードアクション、アイテムの収集による強化・成長要素などが特徴となっていました。
ゼロシリーズはそこからビジュアルイメージを一新しつつ、ハードな世界観とハイスピードアクションの要素に特化し、より洗練させたタイトルとなっています。
自分にとってはロックマンシリーズの中でも最初期に触れたシリーズであり、『ロックマンゼロ2』を最初に遊んで以来今に至るまで折に触れて遊び続け、『星のカービィ スーパーデラックス』や『スーパードンキーコング』シリーズと並んで、ゲーム体験の礎となっているシリーズです。
そもそもこんな2Dアクションゲームに特化したブログを書くようになったのも大体ロクゼロのせい……
あまりに慣れ親しんだタイトルのため逆に評価が難しく感じているところもありますが、今年はせっかくのシリーズ生誕20周年。お祝いの気持ちを込め、改めて所感をまとめてみたいと思います。
ハードな世界観と、魅力的なキャラクターたち
本シリーズで描かれるのは、Xシリーズからさらに100年以上先の未来。限りなく人間に近いロボット="レプリロイド"が存在する世界観が引き継がれています。
しかし、度重なるレプリロイドの争いによって世界は大きく荒廃しており、生き残った人類を守るために築かれた理想郷"ネオ・アルカディア"も、罪なきレプリロイドを処分するディストピアと化しています。
云われなき弾圧を受けたレプリロイドたちはレジスタンスを組織するも、その命は風前の灯火。
彼らは最後の希望を賭け、封印されし伝説の英雄"ゼロ"を、100年の眠りから解き放ちます。
かくして、かつてはイレギュラーハンターだったゼロが、今度は政府にイレギュラー認定される立場となって戦いに身を投じることとなります。
非常にハードなストーリーが展開される本シリーズですが、その世界観を彩る大きな要素となっているのが、中山徹氏により一新されたデザイン。
いかにも"ロボット"なデザインだった従来シリーズから一転、本シリーズでのレプリロイドは有機的・曲線的なデザインで描かれ、スタイリッシュでありつつも生々しさや独特の色気があり、神秘性をも兼ね備えています。
主人公のゼロもまた、設定的にはXシリーズと同一人物ですが、作品コンセプトに合わせたデザイン変更によってより人間的なフォルムに。
永い眠りで記憶を失い、寡黙な性格になっていたりと、描き出される人物像にも変化が見られ、独自の解釈によってXシリーズとはまた一風変わった魅力を付与されています。
ゼロの周囲を取り巻くキャラクターも魅力的な面々揃い。
レジスタンスに味方する唯一の人間であり、ゼロを目覚めさせた科学者の少女"シエル"は、平和的解決を求めて新エネルギー開発に取り組む聡明さや、徐々にゼロとの信頼を重ねていく様子が丁寧に描かれています。
敵のボスキャラも個性的。その中でもゼロと幾度も対峙し、人間を守る矜持とゼロへの激重感情を見せるようになるネオ・アルカディア四天王は強いキャラクター性を放つ人気キャラたちです。
一方で、ロックマン史に残る強烈な悪意と狂気を見せつける"ドクター・バイル"の悪逆非道っぷりもインパクト大。これぞ悪役! という魅力があります。
そして、物語を支えているのはこうした主要キャラだけではありません。
ゼロシリーズではミッションの合間に拠点を歩き回ることができ、そこでは従来シリーズにはあまり登場しなかった、大きな力を持たない一般のレプリロイドや人間たちが生きる姿が描かれます。
これによって、より世界観の奥行きを深く感じられ、濃密なストーリーを楽しむことができるようになりました。
なお、初代シリーズやXシリーズをやっておくとより味わい深くはなるものの、それらを知らずともゼロシリーズ単体で成立するストーリーであり、ゼロシリーズ独自の展開だけで話を持っていくパワーも持っているので、無理に従来作を押さえておく必要はありません。
実際、自分はゼロシリーズから入りましたが、十分楽しめていました。
よりスムーズに洗練されたハイスピードアクション
ここからはアクションゲームのお話です。
本シリーズのゼロは、バスター、セイバー、ロッド、シールドの4種の武器から同時に2つを装備して戦うスタイル。
ロッドは作品によって大きく特徴が異なるほか、ゼロ4ではロッドとシールドが無い代わりに敵に武器を奪うナックルが追加されることで、各タイトルの個性付けを行っています。
シリーズを通しての最大の特徴と言っていいのは、その操作性の良さ。
あらゆるアクションがレスポンスよく機敏というだけでなく、アクションの繋ぎも滑らかで引っかかりが少ないため、非常に軽やかに動かすことができます。
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— 紅茶 (@tea_creates) 2022年4月16日
慣れてくると、このようにバスターとセイバーを両立させたプレイングも可能に。
撃って、斬って、走って跳んでまた斬りまくる。とにかく基本動作の質が良いのですよね。
セイバーで敵を倒すと血飛沫とともに真っ二つに斬り裂かれる演出もまた爽快感があり、アクションの手応えを高めている要素。
システム自体はオーソドックスですが、操作性の良さが一つの個性と言えるレベルまで磨かれており、今遊んでも見劣りしない、スムーズかつハイスピードなアクションが味わえます。
と言いつつ、気になる部分もありはします。
GBAの決して大きくはない画面の中でキャラが大きめに描かれているので、やや画面が狭く感じられ、敵との衝突事故が少なくないのですよね。
『ゼロ3』などは比較的事故りにくいステージ構成であるように思われますが、基本的にはシリーズを通して悩まされる部分。
操作は快適であっても、思い切りよくスピーディに駆け抜けるにはステージを覚えることが求められてきます。
攻略の助けとなる様々なシステム
アクションのスピード感が高いということは、それ相応のテクニカルな動きを求められるということでもあります。
とはいえそこはロックマンらしく、攻略においては「これがあれば勝てる」という「答え」が用意されています。
ゼロシリーズで鍵となるのは、炎、氷、雷からなる3すくみの属性システム。
敵の属性に対して弱点を突くことで、戦いを有利に進められます。
敵側がどの属性かは大抵一目でわかるので、弱点を突くこと自体は難しくありません。
こちら側は基本、チャージ攻撃に属性を付与して使うのですが、チャージセイバーが威力・攻撃範囲共に強く、これを振り回しているだけでも大部分はなんとかなるレベル。
8つの武器を切り替えて、当てやすさやダメージ量を比較して……なんて試行錯誤も要さず、共通した属性システムに落とし込むことで、わかりやすくシンプルな仕組みへと変化しています。
といっても、最初にエレメントチップを入手するためにやはり1体は弱点無しで倒さないといけなかったり、作品によってはチャージセイバーが弱体化していたり、そもそもボスのうちの半分くらいは弱点の無い無属性だったりするのですが。
攻略の一助ではあるものの、それ一辺倒では通らず、アクションの上達を促すバランスにもなっています。
また、属性の他にもゼロを強化したり攻略の助けとなる要素は様々に用意されていますが、作品ごとに毎回違ったシステムになっており、試行錯誤が見られます。
詳しくは個別のタイトルの項で紹介しますが、シリーズの共通要素と存在しているのが"サイバーエルフ"と呼ばれる電子の妖精たち。
彼らの力を借りることで、回復やHP上限アップ、即死のガードや技の強化など、様々な効果を得ることができます。
エルフの中でも強力な力を持つものは"Eクリスタル"を与えて成長させなければならず、その他にも心理的なものからシステム的なものまで使用にはいくつかの制限があるものの、アクションの苦手な人にとっては心強い味方になるであろう存在です。
極限のやりこみでリザルト100点を目指せ
もうひとつシリーズの特徴として、ステージクリア時に評点が付けられるリザルトシステムがあります。
リザルトは基本的に減点方式。規定のクリアタイムや撃破数、ダメージ量を満たすことで高得点を取ることができ、点数に応じてランクが与えられます。
そしてAランク以上を維持していると、ボスの行動に高難度のEX技が追加。
高評価を取れるような上級者には、さらなる試練を与えるような設計になっています。
評価基準はそれなりに厳しく、1ミスするだけでもリザルトには大打撃。
Sランクを目指す場合ノーミス・スピードクリアは前提となり、100点満点となると被弾は最悪でも2回に抑える必要があります。
当然容易いことではありませんが、被弾できない緊迫感と、敵を斬り伏せてステージを一気に駆け抜ける爽快感とのせめぎ合いはたまらないものがあり、コアなファンを生み出すやりこみ要素のひとつとなっています。
ここまでが、シリーズを通した大まかな特徴として挙げられる部分。
詳細を省いたところもあるので、ここからは各作品についてそれぞれ掘り下げていきます。
ロックマンゼロ
2002年発売。ネオ・アルカディアとの最初の戦いが描かれるシリーズ1作目。
レジスタンスが極限まで追い詰められた困窮状態から始まり、荒廃した世界の寂れた雰囲気が特に色濃く表れている一作です。レジスタンスベースはオンボロだし、仲間たちも皆疲弊した様子。
また、デザイナー中山氏が「青いやつと戦わないといけないんだと思わせたかった」と語っている通り*1、作品を通して青いボディの量産型レプリロイド"パンテオン"が立ちふさがり、最後にはネオ・アルカディアの統率者として君臨する青き英雄"エックス"との戦いが待ち受けているという、ゼロVSエックスの構図も描き出されています。
ゲームシステム部分では1作目ということもあり、全体的には簡素な印象でありつつも、挑戦的な取り組みも多く盛り込まれています。
伝統的な8ボスのステージ選択画面ではなく、クリアしたミッションに応じて新たなミッションが追加されていく形態などがその例。
ミッション冒頭でいきなりボスが出てきたり、ボスを倒した後も護衛ミッションが続いたり、同じステージで構成を変えて複数のミッションが発生したりと、ストーリーに合わせた変則的な展開も取り入れられています。
後のシリーズではあまり見られなくなっていく要素ですが、ただ敵を倒すだけが目的ではないストーリーの味付けとしてうまく機能している部分ですね。
レジスタンスベースを中心に各ステージが繋がっており、ミッション外で探索できたりするのも特徴的。
ただ全体的には、ゲームバランス的にまだ粗い部分が多めです。
今作の専用武器である"トリプルロッド"は、上下に強く使い所が無いわけではないものの、どうにも地味な印象が拭えません。
シールドの出番も同じく少なめ。
また今作では武器経験値システムというものがあり、武器を使い続けることで三段斬りやチャージ攻撃が解禁されていくようになっていますが、必要な経験値が多いために「セイバーやバスター以外ほとんど成長してない」なんてこともままあります。
同じように、サイバーエルフの育成にかかるEクリスタルが多すぎるのも難点。
今作ではエルフなしではサブタンクも持てないのに、稼ぎ作業を挟まなければ強化系はロクに使えません。
また、サイバーエルフは使うと死んでしまう上にリザルトも減点されるので、人によってはなかなか使う気になれないという問題もあります。
腕自慢のアクションゲーマーでもなければ点数なんか気にしなくていいじゃないか、と言いたいところですが、今作に限ってはリザルトで付けられる称号の中にかなり辛辣なものも含まれているので、どうにも見過ごせない部分です。
もっとも、幼少期の自分は全く気にせずエルフを使いまくっていたので、案外そんなものかもしれませんが。
そして一番難儀なのが、独特なリトライシステム。
残機0の状態でミスすると、残機をリセットしてミッション最初からやり直し……ではなく、残機は0のままでミッションは失敗扱いになります。
すると今度は残機0のまま次のミッションに挑むことになり、これを繰り返しているとロクに強化を進められないまま最終ステージに臨むことになります。
そうならないためには、セーブからやり直してミスせずにミッションをクリアするか、ザコをせっせと倒して残機を稼ぐ必要があり、なんとも遊びにくい仕様です。
武器経験値やEクリスタルも含め、楽に進めるにはとにかく稼ぎをしないといけないのですよね。
逆に言うと、稼ぎさえすれば楽になるということでもありますが……
また、マニアックなところですが、リザルトのエネミーカウント要求量が高いため、やりこみ勢も結局稼ぎ作業からは逃れられないようになっています。
まとめ:
初作というだけあり色々と粗く、また演出面でもやや飾り気に欠ける本作。
とはいえ基本的な操作性はこの時点で完成しており、爽快なアクション性は十分な魅力を持っています。
ユニークなミッション構成も本作ならではの個性。
諸々の難点も上達してくると気にならなくなるので、とにかく腕前を上げてなんとかするか、せっせと稼ぎ作業をするかというスパルタな設計です。
これからダブコレで遊ぶ場合はアシストセーブを使うだけでもリトライの問題が改善されるので、そちらがオススメかもしれません。
ロックマンゼロ2
2003年発売。"ダークエルフ"を巡る新たな戦いが幕を開け、ゼロシリーズ独自の世界観がより濃く表れ始める第2作目。
鍵となるキャラクターは、新生レジスタンスの司令官を務める"エルピス"。
特別な力を持たない彼が徐々に強大な力に飲み込まれていく様は、どこか情けなくもあり人間臭くもあり、特異な存在の多い主要キャラの中で異彩を放っています。
四天王の面々がゼロに重たい感情をぶつけていく様子も印象的で、強大な英雄の存在を前に周囲が徐々に狂っていく描写が丹念に描かれた一作となっています。
Newレジスタンスベースにも個性的な仲間が増え、前作から更にキャラクターの魅力が拡張されていますね。
#ロックマンゼロ pic.twitter.com/k0haGuoqod
— 紅茶 (@tea_creates) 2022年4月16日
演出周りも各所で強化されており、その中でもOPステージでのゼロの登場シーンは、スチルの格好良さとBGMとのリンクによって、ゲームを始めたプレイヤーの心をがっちり掴む名シーンとなっています。
OPステージのみメニュー画面が前作『ゼロ1』のままで各所に破損表現が加えられているなど、細かい部分のこだわりも強く感じられます。
その他だと、フェニック・マグマニオンの登場演出なんかも印象的。
また、システム面も色々と整備され、要素の追加も行われています。
まず大きなところとして、ゲームオーバー時のリトライが通常のコンティニュー方式になりました。
普通に戻っただけと言えばそうですが、前作からすると大きな改善点です。
サイバーエルフの育成にかかるEクリスタルも減り、稼ぎをしなくてもエルフの強化が容易になりました。
使うと死んでしまう点やリザルトでの減点はまだそのままなので、誰もが使いやすくなったとまでは言えないところですが……
ただ、サブタンクに関してはエルフとは別でステージ内で獲得できるものが2つ用意され、エルフを消費せずとも使えるようになっています。
トリプルロッドに代わる新武器も登場しています。その名も"チェーンロッド"。
地形に引っ掛けることでぶら下がり移動したり、ブロックを引っ張って動かしたり、敵の盾を引きはがしたりと、チェーンの特性を活かした様々な用途があり、非常に個性的な武器になりました。
先端に当てる判定のシビアさに困らされる場面もありますが、明確化された出番があることで、バスターとセイバーばかりに頼るのでないアクセントをゲームに与えています。
部分的ですがシールドもわかりやすく活躍する場面があり、色々な武器を使い分ける試みは前作から大きな進歩を見せています。
また新要素として、ランクがA以上のとき、ボスがEX技を使う状態でクリアすると、敵の技をキャプチャーして使える"EXスキル"が追加されました。
あくまでAランク以上のご褒美なので、初代やXシリーズの特殊武器のように攻略の助けになるというよりは、上級者がより完璧なプレイをするためのテクニックのような位置付けとなっています。
実際、攻略上はチャージ攻撃の方が安定しますしね。
もうひとつ追加された要素が"フォームチェンジ"。
例えばミッション中にダッシュ斬りで一定数攻撃すると機動力の高い"アクティブフォーム"が覚醒したり、バスターを多用しているとバスター特化の"エックスフォーム"が覚醒したり、といった具合に、ミッション中の行動によってクリア時に新たなフォームが使えるようになります。
条件的に普通に遊んでるだけではあまり解放されなかったりするのですが、いくつか狙って使えるようにしておくと、ステージに合わせて切り替えるような遊びもできるようになります。
システムが各所で改修されている一方で、ステージ・ボスの設計は比較的難易度高めに作られています。
OPステージからして、中ボス戦が2回もあったり足場が悪かったりと殺意が高め。
ゲーム全体を通して、シビアな操作入力を要求する場面や、意図的に衝突事故を狙ったような意地悪な敵配置も見られ、後半は特にトゲやらマグマやらが多く待ち受けています。
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— 紅茶 (@tea_creates) 2022年4月16日
ただそうした中でも、スリリングなトラップの中を勢いよく駆け抜けていくスピード感を強調した場面もあり、ゼロのアクションの魅力をさらに掘り下げてもいます。
まとめ:
演出面の強化に加え、システムの整備により遊びやすさが向上し、アクションの幅も広がったりとゲームとして全体的にパワーアップを見せる一方で、難易度もまたきっちり上げてきた、そんな印象のシリーズ2作目です。
ロックマンゼロ3
2004年発売。災いの元凶である"ドクター・バイル"、そして宇宙から飛来した謎の巨大レプリロイド"オメガ"が登場し、ダークエルフを巡る新たな戦いが繰り広げられる第3作目。
強大な敵を前にゼロとシエルが絆を確かめ合う様子や、四天王ハルピュイアの正義を貫く覚悟が描かれ、クライマックスではゼロが封印された100年前の真実が明かされるなど、見所盛りだくさんのストーリーが展開されます。
システム周りやアクション性も、『ゼロ2』をベースに更なる改善がなされ、より遊びやすくなっています。
まず、新武器の"リコイルロッド"はチャージ攻撃時に敵を吹き飛ばせる、トンファーやパイルバンカーのような武器に。ブロックを押し出すことでステージギミックを作動させる個性付けがされているほか、戦闘においても扱いやすいものになっています。
また、武器の経験値システムが廃止され、最初からチャージ攻撃ができるようになったため、他の武器に関しても使いやすくなりました。
フォームチェンジも撤廃され、代わりにチップによる強化が追加。
ヘッド、ボディ、フットの3種を装備でき、チャージ時間を短縮したり、エレメントを付与したり、ダブルジャンプを可能にしたりと、効果は様々。
また、サイバーエルフは従来通り使い切りの"フュージョン"のほかに、"サテライト"という新タイプが追加されました。
サテライトは2体までエルフを装備することができ、エルフが死ぬことがなく、リザルトでの減点もありません。強化系のフュージョンタイプエルフも、Eクリスタルを与えることでサテライトと切り替えることができます。
拠点以外でもいつでもエルフの管理ができるようにもなっており、全体的に利便性が向上。従来より気兼ねなく使用できるようになったため、チップと併せてカスタマイズの幅が大きく広がっています。
チップやエルフなどの収集要素は、ステージや拠点で手に入る"シークレットディスク"に集約されていますが、ディスクの中には用語解説やキャラクターデータが記録されたものもあり、ストーリーの補完としての役割も持っています。
ステージ構成にも磨きがかかっており、前作のような意地悪さやシビアさは抑えられ、スピード感とステージギミックの個性付けが両立されたバランスの良い調整がされています。
ボスのアクションもよりダイナミックでキレの良いものになり、多くのボスにボイスが実装され、演出面でもパワーアップ。
GBAの性能や画面構成に適したアクションゲームとして、完成度の高い内容にまとまっているように感じられます。
まとめ:
新武器リコイルロッドやチップの追加、サイバーエルフのサテライト利用といったシステム改修によって、各要素に触れさせるモチベーション誘導が過去2作より自然になり、ステージ・ボスの難易度調整もよりバランスの取れたものへと進化。
シリーズ3作目にして欠点らしい欠点は概ね解消され、全体的に遊びやすく、かつ奥深い、『ロックマンゼロ』というシリーズの神髄を感じられる内容へと大きな躍進を見せました。
ストーリーでも大きな盛り上がりでもってプレイヤーを魅了し、シリーズを代表する完成度の高い一作に仕上がっています。
ロックマンゼロ4
2005年発売。バイルとの因縁に終止符が打たれるシリーズ完結作。
今作では、これまで直接描かれてこなかった人間の一般人が登場します。
バイルの独裁支配から逃れるべくキャラバンを結成した彼らが目指すのは、荒廃した地上で奇跡的に自然環境が蘇りつつあるという"エリア・ゼロ"。
そこは、かつて『ロックマンX5』においてスペースコロニー"ユーラシア"が落下した、最も大きな戦争の傷跡でもあります。
しかし、そのエリア・ゼロも傭兵の"クラフト"が指揮する"ラグナロク作戦"の標的となり、人々の安寧は再び脅かされようとしていました。
人とレプリロイドが手を取り合う世界……今は亡き一人の科学者が願い、友から託されたその未来を守るため、ゼロは最後の戦いへと臨みます。
過去のシリーズに対する直接的な言及は少なく、あくまで単体で楽しめるストーリーですが、散りばめられた要素にはシリーズを跨いだ集大成的な趣も持ち合わせています。
その一方、ゲームシステム面では一旦の完成を見た『ゼロ3』の後ということもあってか様々な部分が刷新され、これまでのゼロシリーズとは一味違う仕上がりになっています。
その最たるものが、新武器"ゼロナックル"。
拳によるリーチの短い攻撃ですが、ゼロナックルでザコ敵にトドメを刺すと、敵から武器を奪い取ることができます。
武器は敵によって全て異なるという贅沢仕様。汎用性ではバスターやセイバーに劣るものの、属性攻撃可能な物や、一部の敵に特殊な効果を発揮するものもあり、様々な活用法が用意されています。
拳による攻撃自体も、物を引き抜くアクションとしてステージギミックやボス攻略で役立つ場面が多く、本作を特徴づける印象的な要素となっています。
サイバーエルフは今回、複数の能力を持つ1体のエルフを成長させ、レベルを上げることで使用できる能力を解放していく形になりました。
3つのタイプのレベル合計値が、8ボスを倒すことで増えていくキャパシティレベルの範囲内であれば減点なしで使用可能。
エルフのレベルをMAXまで上げるには稼ぎも必要ですが、前作から一味変えつつこちらはこちらで工夫しがいのあるシステムになっています。
前作から引き続きチップによる強化もありますが、こちらは敵がドロップする素材を組み合わせ、自分で作成するシステムに変わりました。
試み自体は面白いのですが、ゲーム内で見れるレシピが少ないのでどの組み合わせで何ができるのかわかりにくかったり、素材を集めるのがやや面倒といった問題もあり、ここに関しては前作と比べ不便になった印象が強めです。
今作では初代やXシリーズのように、8ボスステージを好きな順序で攻略できるのですが、新システムとしてステージの天候を変更できるようになっています。
天候を変えれば、ステージギミックはもちろんボス戦の難易度も変化。
あえて敵に有利な天候にすればボスがEX技を使うようになり、倒せばEXスキルを得ることができます。
高ランクでなくてもEXスキルを使えるようになりましたが、その分EXスキルの重要性も上がっています。
今作ではチャージ攻撃に属性を付けられなくなり、弱点を突くにはEXスキルやゼロナックルによるウェポンが必要になっているのです。
敵から奪った能力を活用するという点でも、初代やXシリーズに近い構成になっていますね。
ちなみに、8ボス以外のボス戦では従来通りAランク以上で技が追加されます。こちらは倒しても特典はなし。
また、チャージセイバーに関しては属性がつけられないだけでなく、威力も少し下がって弱体化しています。
「とりあえずエレメントチャージセイバー」という戦法が通用しなくなり、ボスの中にはかなりスピーディな敵もいるため、従来より難易度高めに感じる場合もあるかもしれません。
まとめ:
チップの開発システムには不親切さも残るものの、様々な新要素で『ゼロ3』までとはまた異なる魅力を切り出し、8ボス周りの構成では初代シリーズやXシリーズへの回帰も感じられるシリーズ4作目にして完結作。
ストーリーでも、これまでスポットの当たらなかった普通の人間や普通のレプリロイドの存在を強調する傍ら、過去シリーズの流れも汲んだ数々の因果を清算する見事な終幕ぶりを見せ、ロックマン・サーガの一つの結末を飾る一作となっています。
総評
作品によっては粗が目立つ部分もあるものの、シリーズとしてコンセプトにブレがなく、一本通った魅力が込められています。
ストーリーも細かく見れば時系列などにツッコミどころがあるものの、ライブ感で楽しめる熱い展開が盛り込まれており、魅力的なキャラクターたちが物語を彩っています。
特に『ゼロ3』~『ゼロ4』に至る流れは、ゼロの背負った宿命への決着、人とレプリロイドの長きにわたる戦いの一区切りとして見所のあるものです。
元々GBAのタイトルということもあり画面の狭さがややネックではあるものの、今遊んでも十分楽しめるハイスピードアクションの名作シリーズ。
『ダブルヒーローコレクション』ではカジュアルモードや遊びやすくなるアシスト機能もあるので、難しいアクションゲームはちょっと……という人にもオススメです。
是非実際にプレイして、敵をたたき斬る快感を味わってください。