2Dアクション好きのゲーム日記

ゲームについて書く。2Dアクション多め。

『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』レビュー:奇想天外、摩訶不思議! 退屈ナシの超怪作で超快作

 

 

はじめに

商品情報

メーカー:任天堂

プラットフォーム:Nintendo Switch

初リリース日:2023/10/20

価格:6,578円(税込)[パッケージ版]

公式サイト:スーパーマリオブラザーズ ワンダー | Nintendo Switch | 任天堂

言わずと知れたスーパースター、マリオについて説明は必要ないでしょう。
最近は映画の効果もあって、さらに人気が高まっているように思われます。

任天堂の顔であるマリオの名を冠するゲームは例年なにかしらリリースされているわけですが、一方で2Dアクションのスーパーマリオブラザーズ』シリーズは2012年の『New スーパーマリオブラザーズ U』以降、長らくシリーズ展開が止まっていました。
その間『スーパーマリオメーカー』が2作出て、その中には任天堂スタッフの制作したステージが収録されていたりもしましたが、そちらはあくまで過去作素材の流用がメイン。新作としてはちょっと物足りない内容です。

そして時が経つこと11年。
満を持してリリースされた『スーパーマリオブラザーズ』シリーズ完全新作が、本作スーパーマリオブラザーズ ワンダー』になります。

正直なところ、自分は元々マリオよりも『スーパードンキーコング』派で、『Newマリオ』シリーズもわりとマンネリ気味に感じていたこともあって、本作も初報段階ではビジュアルの変化は感じ取りつつも「そうはいってもいつもの2Dマリオじゃないのか?」とかいう舐めた姿勢を捨てきれずにいました。

ちなみに参考程度に書いておくと、2Dマリオは初代『スーパーマリオブラザーズ』『3』『ワールド』と『Newマリオ』シリーズ全部を大体クリアまで遊んでいます。Wii』はクリア後も含めて遊びきった記憶。

ですが、本タイトル単独のDirectで様々な要素が刷新されているのを見て、思わず襟を正しました。
考えてみれば、あの2Dアクションの金字塔である『スーパーマリオブラザーズ』の、11年間を空けての満を持しての完全新作が、只者であるはずはないのです。

徐々に高まる期待を胸に、発売日当日から始めて完全クリアまで遊びきったわけですが……待ち受けていたのは、期待を遥かに上回る体験でした。

というわけで本記事は、クリアまでは12時間、完全クリアまで含めると17時間ほどプレイしてのレビューになります。
なお、ほぼほぼオフライン状態でプレイしました。参考までに。

 

ゲーム概要

ストーリー

舞台となるのはフラワー王国」
例のごとく大魔王クッパが現れて平和を脅かすわけですが、今回のクッパは不思議な力を持つ「ワンダーフラワー」を奪い去り、現地の城と融合して「クッパへと変貌を遂げます。城クッパってなんだよ。

父親が無機物と化した珍事に対し、息子のJr.はこの反応。
いいのかそれで。

 

ともあれクッパ軍団の魔の手からフラワー王国を救うべく、マリオと仲間たちのワンダーな冒険が幕を開けます。

 

基本はいつもの2Dマリオ。でもゾウになる

基本的なゲーム内容は従来の2Dマリオと同じ。
ジャンプアクションを中心とした、横スクロールのアクションゲームです。

ステージを進んでゴールを目指し、クリアしたらまた次のステージへ……というステージクリア型。
ステージ選択マップはいくつかのワールドに分かれており、全ワールドを踏破して城クッパに乗り込むのが目標です。

 

マリオの基本アクションは、シンプルなジャンプとダッシュ
ジャンプで敵を上方から踏みつけることで攻撃することができ、さらにパワーアップアイテムを取って変身することにより、それぞれの変身形態に合わせた攻撃も可能になります。

最弱のちび状態では敵やトラップに触れると1発アウトですが、スーパーキノコでパワーアップ中はもう1発、さらにパワーアップ中であればもう1発分耐えることができる、という昔ながらの仕様。

今回のパラーアップは、おなじみのファイアもちろんのこと、新種のゾウ、アワ、ドリルなどが加わっています。
その中でも印象的なのは、やはり見た目のインパクトが絶大なゾウ変身。

マリオの変身と言えば着ぐるみ的なコスプレでしたが、本体側が変身するのってありなんだ……
実際使ってみると、鼻による近距離攻撃が使いやすかったり、体が大きい分こちらの踏みつけも当てやすかったりと意外と使い勝手も良し。
水を鼻に溜めて放射する、『スーパードンキーコング3』のエリーみたいなギミックもあります。

 

他の変身に関しても、アワ変身での泡攻撃はこう見えて殲滅力が高く、空中で泡を踏んでジャンプできたりと便利ですし、

ドリル変身はゲーム後半からの登場ですが、硬いブロックをも粉砕するのが気持ちよく、地面や天井に潜れる移動能力の高さが探索に役立ったりと、どの能力もしっかり使い所が用意されています。

 

不思議で不条理な「ワンダー」でいっぱい

本作の最大の特徴はやはり、ゲームタイトルにもなっている「ワンダー」です。
ステージ中に隠された「ワンダーフラワー」に触れることで不可思議な現象が発生し、ステージの様子が一変するというものですが……

土管がうねうねと尺取り虫のように動き出したり、マリオの体がみょんと伸び縮みしたり、パックンフラワーが突然歌いながら行進してきたりと、とにもかくにも絵面のインパクトが抜群。
不条理ギャグみたいなヤバい演出が次から次へと出てきます。
大体何かが巨大化したり、敵の数が大量に増えたり、急に歌が流れることが多い印象ですが、マリオが変身したりして操作システムがガラリと変わるワンダーもあり、その内容は演出的なものに留まりません。

 

奇抜な映像に目を奪われるワンダーですが、真に恐ろしいところはバリエーションの豊富さにあります。
なんとこのワンダー、後述のバッジチャレンジのような特殊なミニステージを除き、70以上の通常ステージ全てに用意されています。

高難度のステージでは基本的に他のステージのワンダーの応用編になっていたりはするものの、大体10ステージあったらそのうち6個か7個は新規のギミックが出てきているのでは? と思うほど(※体感です)、手を変え品を変え様々なワンダーが登場します。
同じタイプのワンダーが出るときも、別のギミックと組み合わせたりシチュエーションを変化させることで体験に変化を付けており、とにかく飽きるということがありません。

これだけステージ数のあるゲームでネタ切れを起こさず、奇抜なアイデアを次々と投入してくるというのは、非常に豪華な内容であると言わざるを得ません。
ステージによってはワンダーを起こすときと起こさない時でギミックが変化して別々のゴールに辿り着くこともあり、作り込みの細やかさが見て取れます。

 

個人的には、"ハックン"のステージを代表にリズムアクション系のワンダーが特に楽しかったところ。
音楽とマッチした遊びは無条件で楽しいものですし、演出もノリがよく華やか。かつギミックにも作用するアクションが用意され、一発ネタで終わらない作り込みが見事でした。

 

豊かな表現力で活き活きと描かれるキャラクター

ワンダーの発生中に限らず、本作は表現力の向上を随所で感じます。
なんといっても11年ぶりの新作ですから。

マリオ達は表情豊かになり、以前は直立不動だった土管に出入りするときのモーションも刷新され、しっかり動きが付くようになりました。

 

敵キャラの動きも凝っており、クリボー同士が接触するとあいさつを交わしたり、パタパタのすぐ近くをファイアボールが通ると慌てたりと、非常に活き活きとした様子を見せます。
2Dのゲームは3Dに比べてキャラの存在感を感じにくいものですが、本作はしっかりキャラクターの魅力を描き出そうとしていています。

本作初登場のザコ敵もなかなかの存在感。
こんなにキノコ全開のやつがキノコ王国の外にもいていいのか……

 

あと、忘れてはならないのが「おしゃべりフラワー」の存在。
ステージの各所に咲いており、ボイス付きでめちゃくちゃ喋りかけてくる謎の花です。
単なる賑やかし要員のようでいて、ヒントになるようなことを言ってくれたり、何かあるところに配置されていることでプレイヤーの誘導になったりと、意外と実用的な存在でもあります。

摩訶不思議なワンダーに対するリアクションも良く、なんだかんだで愛嬌があって「こいつがいて良かったな」と思える存在でした。
かましく感じる人はオプションで黙らせることも可能ですが……

 

初心者から熟練者まで。自由度の高い攻略システム

本作でシリーズとしての進化を感じた部分として、もう一点強めに主張しておきたいのが自由度の高い攻略システム。
新システムの「バッジ」と、3Dマリオのノウハウを取り込んだマップ構成により、初心者へのサポートと熟練者を飽きさせない工夫が盛り込まれています。

 

まず「バッジ」のシステムについて。
ゲームを進めていくと様々な能力を持つバッジが手に入ります。

空中でゆっくりと降下する「帽子パラシュート」や、周囲のコインを吸収する「コイン吸いこみ」、収集アイテムや隠しゴールを察知するダウンジングなど、全24種類。
装備できるのは1つなので、自分のプレイスタイルに合ったものを選択します。

従来の2Dマリオではジャンプ補助系のパワーアップは変身能力の1種として実装されていましたが、今回はこのバッジとして組み込まれているため、ダメージで失うこともないし他のパワーアップ変身と併用することも可能になりました。
効果も結構強力なものが揃っています。

アクション系のバッジには専用の「バッジチャレンジ」ステージが用意されています。
基本的な使い方を学ぶものから、難易度の高い応用編まであり、どのバッジも一回はスポットが当たる仕組みになっています。

バッジはマップ画面のほか、ステージでミスした時にも付け替え可能なので、ステージ構成に合わせたものに変えてすぐリベンジ! ということもスムーズにできます。

 

本作では常連キャラに加えてデイジーキノピコどを含めた全12種のキャラクターを選択可能になっていますが、無敵のお助けキャラであるヨッシートッテンを除いて性能差は無いため、キャラに関しても気兼ねなく切り替えて遊ぶことができるようになっていますね。
ちなみにヨッシートッテンは変身アイテムこそ使えないものの、キャラの仕様自体にデメリットは一切なし。気軽に使えます。

 

次にマップ構成について。

スーパーマリオブラザーズ3』以降、ステージという点を線で繋いだマップ画面が伝統的に採用されてきました。
これまでもボスステージまでのルートが分岐して攻略するステージを選べたり、ステージ中の隠しゴールを見つけることで新たなルートを発見したりといった要素がありましたが、本作ではさらにステージ選択の自由度が上がっています。

マップ画面中には一部開けた区画が用意され、その中では自由に動き回ってステージを選ぶことができます。
つまり、マップが「線」だけではなく「面」の要素が加わったのです。
シリーズ的には『3Dワールド』のマップ画面をより自由度高くしたようなイメージですね。
要所要所では避けて通れないステージもあったり、通行に「ワンダーシード」を一定数集める必要はありますが、クリアを目指す上では全てのステージをクリアする必要はありません。

各ステージの難易度をマップ画面上で事前に確認できるようにもなっており、高難度ステージは後回しにしたり避けて通ることもできます。
全体としてはゆるやかに難易度が上がっていきますが、序盤から脇道にポンと高難度ステージが配置されているので、腕自慢のプレイヤーを飽きさせない良いアクセントにもなっています。

 

難しいステージで躓いたときは、ショップで買い物するのも手です。
ステージ中で拾える紫色の「フラワーコイン」を集めれば、ショップで残機やバッジを購入可能。
お金が余ってる人は後述のオンラインプレイで使える「パネル」を買ってコンプを目指しましょう。

 

各ステージにはワンダーのクリアとステージのゴールでそれぞれ手に入る「ワンダーシード」のほかに、1ステージに3枚ずつの「10フラワーコイン」などの収集要素があります。
これらを全て集め、ゴールポールの一番高いところを掴んでゴールすればそのステージはコンプリート。

コンプしたステージはステージリスト画面でマークが付くので、どこに取りこぼしが残ってるかがわかりやすく、やり込み勢にも優しい作り。

また、10フラワーコインは一度取るとミスしても取得済み扱いになります。
これはこれで「残価を犠牲にして取ればいい」的な雑プレイを招きやすく、命が安くなるところではありますが……それよりはさっさと集めてもらってテンポ良く進めてもらうことを選択したということでしょうか。

 

ともかく、本作は「バッジ」の追加とマップの様々な改善により、初心者から熟練者まで幅広い層へ、より自然な形でアプローチを仕掛けてくれるゲームに進化しています。
同じステージで苦戦しているとこれ見よがしに救済アイテムが出てきたら「クリアしたことにしますか?」とか聞いてくることも……ない!

 

ゆるいつながりのオンラインプレイ

そしてさらに、本作では従来のローカル4人プレイに加えてオンラインプレイも可能になりました。
自分はほぼOFFにしてプレイしていましたが、簡単にご紹介。

通信アンテナでさえ擬人化される世界

オンラインプレイをONにすると、同じステージを同時にプレイしている世界の誰かが、薄く透けた「ライブゴースト」として表示されます。
ライブゴーストは直接触れることはありませんが、ミスして「タマシイ」状態になったときに、他のライブゴーストや誰かがステージに設置した「パネル」に触れれば復活することができますし、動きを見せて収集要素のヒントを出すこともできます。

お互い損をすることなく得だけがある、ゆるいつながりのオンライン。

強いて言えばステージの軽いネタバレになるのが難点ですが、探索で行き詰まった時は頼りになりますね。

 

総評

奇抜で目を引く演出を筆頭にネタの尽きない様々なアイデアがぎっしりと詰め込まれ、どこまでも驚きに満ちた退屈ナシの超怪作。
それでいてつくりは丁寧で、遊びはより幅広く、より快適に進化し、終わった後には迷いなく「良いゲームだった」という気持ちが染み渡る、文句ナシの超快作。

これぞまさしく「ワンダー」な、2Dマリオの決定版です。
個人的には2Dマリオには3Dマリオほどの魅力は感じていなかったのですが、認識を改めざるを得ませんでした。やっぱりマリオはすごいぜ。

スーパーマリオブラザーズ』の名を冠する、11年ぶりの完全新作。
任天堂が送り出す、フルプライスの2Dアクション。
その答えがこれだ!!

気になる人は今すぐ……「ワンダー」に飛び込め!