ファミコン生まれの、青いヒーロー。
- 『ロックマン』シリーズとは
- ロックマン
- ロックマン2 Dr.ワイリーの謎
- ロックマン3 Dr.ワイリーの最期!?
- ロックマン4 新たなる野望!!
- ロックマン5 ブルースの罠!?
- ロックマン6 史上最大の戦い!!
- ロックマン7 宿命の対決!
- ロックマン8 メタルヒーローズ
- ロックマン9 野望の復活!!
- ロックマン10 宇宙からの脅威!!
- ロックマン11 運命の歯車!!
- 総評
『ロックマン』シリーズとは
1987年の第1作『ロックマン』からスタートし、2018年の最新作『ロックマン11』まで続く、言わずと知れた大御所シリーズ。
その知名度と完成度ゆえに、インディー界隈で多くのフォロワータイトルを生み出しました。
ゲームボーイの外伝『ロックマンワールド』や、システムを大きく刷新した『ロックマンX』『ロックマンDASH』など多くの派生シリーズを展開した一大ブランドでもあります。
今回は『ロックマン クラシックスコレクション1+2』に収録された10作に、現在の最新作である『ロックマン11』を含めた初代ロックマンのナンバリング11作を対象にレビューします。
心優しい青きロボット
20XX年。ロボット工学が高度に発達した時代。
世界征服を目論む悪の天才科学者"Dr.ワイリー"は、ロボット工学の権威"ライト博士"が設計した工業用ロボットたちを改造、暴走させ、世界を混乱に陥れていました。
心優しき家庭用ロボットのロックは、兄弟機たちを止めるため、自らを戦闘用に改造することを志願。ライト博士は苦渋の決断の末ロックを改造します。
こうして生まれ変わった"ロックマン"は、Dr.ワイリーの野望を阻止するべく、暴走するロボット軍団に単身立ち向かっていく……
という導入から、シリーズはスタートしていきます。
キャラクターデザインはメカニカルながらもポンコツ感を含み、宿敵のワイリーも悪党でありながらどこか憎めない存在だったりと、シリーズを通して親しみやすく愛嬌のあるロボット世界が描き出されています。
一方、同じロボットとの戦いに心を痛めながらも、その身を削り悪に立ち向かうロックマンの姿は、見る者の胸を強く打つものがあります。
そして、そうしたロックマンの心情を表すような熱くも哀切なBGMの数々。
アクションゲームということもあり、物語性が強調されることはあまりありませんが、こうした世界観やロックマンのヒーロー性も、シリーズを支える大きな魅力の一つです。
「答え」のあるアクションゲーム
初代ロックマンシリーズは、ジャンプ&ショットが基本となる2Dアクションゲーム。
特徴となるポイントは、以下の3つ。
- 8つのステージを好きな順番で攻略できる。
- 各ステージのボスを倒すことで、そのボスの能力をコピーした特殊武器が手に入る。
- 特殊武器は他のボスの弱点となっていたり、ステージギミックに干渉することで戦いを有利に進められる。
ロックマン1, 2を手掛けた初代プランナーであるA.K氏は以下の言葉を残しています。
難しいシーンや強敵に対して、テクニックや反射神経だけではなく、これがあれば、こうすれば確実に攻略出来るという『答え』のあるアクションゲームってできないだろうか。そんな発想でロックマンを作り始めました。
~新装版 ロックマンマニアックス 下巻 短編・設定&対談編 P.193より引用~
ロックバスターだけでは苦戦する場面でも、有効な特殊武器を探り当てれば容易に攻略できる。「答え」を探り当て、攻略順序を工夫することで苦手なボスやステージにも対処できるようになる。
よく難しいゲームとして名を挙げられるロックマンですが、特殊武器を用いた”答え”に加え、体力を全回復する反則級の回復アイテム"E缶"といった救済措置もあり、結構「ズルい攻略」を許容してくれる懐の広さを持ち合わせてもいるのです。
とはいえ実際のところ、それらの要素を使うか否かはプレイヤー次第。
それによって、簡単か難しいかの判断、面白いと感じるか否かも大きく変わってくるので、その人のプレイスタイルが感想に大きく反映されるタイトルとも言えます。
8ボスステージをクリアすると、宿敵Dr.ワイリーが待ち受ける最終ステージが出現。
ワイリー城では8ボスとの再戦(いわゆるボスラッシュ)が待ち構えており、それまで集めた特殊武器を駆使して立ち向かうことで、プレイヤーは自身のプレイスキルとロックマンの成長を実感する……という流れも、シリーズの"お約束"として広く知られています。
シリーズ全体の概要を説明したところで、いよいよ各作品をひとつずつ紹介していきます。
ロックマン
1987年発売。記念すべきシリーズの原点です。
初作ということもありグラフィックはやや素朴で、チャージショットやスライディング、E缶もまだありません。
他にも、ボスが6体、ボス部屋前の通路にザコ敵が配置されている、特に意味は無いがスコア制が採用されているなど、仕様もまだ固まっていないところがちらほら。
とはいえ、特殊武器や相性関係による「答え」のあるアクションゲームというシリーズの基幹要素はしっかり出来上がっています。
E缶が無い分難易度は高く、ステージの冒頭でいきなりやたら難しいスポットに当たったり、一部のボスが弱点武器3発であっけなく片が付いたり、逆にこっちも数発でやられたりと、やや大雑把というか、極端な調整になっているところもありますが、ロックマンらしい遊びが詰まった、アクションゲームとして十分楽しめる作品に仕上がっています。
ロックマン2 Dr.ワイリーの謎
1988年発売。前作から容量が倍に増え、各所がパワーアップ。
ボスは8体に増え、救済要素として回復アイテムのE缶も実装されました。
とはいえ、今作ではゲームオーバー時にE缶を没収されるので、まだまだ難易度は高めです。
おなじみのロックマンフォーマットの基盤は、ここで出来上がったと言えます。
ちょっとメタルブレードの燃費が良すぎて万能武器になってしまっているところもありますが、他の特殊武器にも使い所が各所に用意されており、『1』で示された「答え」のあるアクションゲームとしての魅力をさらに掘り下げています。
特徴的で印象に残るクイックマンステージの即死レーザーを筆頭に、ギミックによる各ステージの個性付けもより強化されました。
普通に戦うとゴリ押し気味の攻略になってしまうエアーマンや、カツカツの武器のエネルギーが尽きると詰んでしまうブービームトラップなど、一部にまだ調整の粗さを感じる部分もありますが、『1』より全体の完成度が向上し、「ロックマンとはどんなゲームか」を体現する、シリーズの代表的な一作となっています。
抜群の知名度を誇り、未だ「ロックマンと言えばやっぱり『2』だ!」という人が多いだけのことはありますね。
ロックマン3 Dr.ワイリーの最期!?
1990年発売。本作ではスライディングが追加されたほか、移動用アイテムが新キャラの"ラッシュ"に置き換えられ、以降のレギュラー要素となります。
E缶所持数の上限が増加し、ゲームオーバー後も持ち越しできるようになったことで、E缶のストックがしやすくなり、難易度の緩和に繋がっています。
しかし、レベルデザインに関しては疑問の残る点もいくつか。
ラッシュの武器エネルギーが尽きたら詰む箇所が中盤以降に多くあったり、
ステージギミックの配置が応用的な難しいパターンを先に出すことがあったり、
直線的なショット系の特殊武器が多く、バリエーションが乏しかったり。
また、本作以降『8』くらいまで共通して言えることですが、「炎系だから水とか氷に弱いだろう」というようなわかりやすい属性関係が減り、弱点武器が分かりにくくなってきています。
シリーズの他作品と比べると若干ながら歪さを感じる部分も多いという印象。
とはいえファミコンのアクションゲームとしては十分以上に遊べるクオリティですし、個人的にBGMはかなり好きなラインです。
特殊武器獲得時の演出も良い。
また、本作は"ブルース"が初登場する作品でもあります。
ブルースの口笛をBGMに彼の出自が明らかになるエンディング演出は、哀愁漂う大変エモーショナルなものになっています。
粗削りな面もありますが、「ロックマンはどこか一抹の物哀しさを纏った作品である」という方向性をさらに印象付けた一作と言えます。
ゲームには直接関係ないけどギガミックスの『アステロイドブルース』めちゃくちゃ良いよね……
ロックマン4 新たなる野望!!
1991年発売。既にスーパーファミコンが出ている時期ということもあり、ファミコン発の本作にもオープニングデモがついたりして、演出がパワーアップしています。
本作ではついにチャージショットが追加。これにより、ロックバスターのみでもある程度強敵と渡り合えるようになりました。
それでいて特殊武器も扱いやすいものが多く、上手くバランスが取られています。
難易度調整に関しても、『1』~『3』から全体的に見直しが図られ、整備されたという印象。
与ダメ、被ダメともにこれまでより抑えられ、『1』のような極端な調整はすっかりなくなりました。
チャージショットの有用性もあって従来より一段階難易度を下げつつ、簡単すぎることもない、程よい塩梅にまとめられています。
チャージショット、スライディング、E缶といったロックマンのパブリックイメージ的な要素が揃ったタイトルにして、バランス調整が見直され遊びやすくなった、シリーズの中でも手堅い一作です。
ロックマン5 ブルースの罠!?
1992年発売。チャージショットの性能が微調整されたり、ラッシュコイルもいつもと少し違っていたりと、微妙な変化を入れつつも流石にそろそろマンネリ感が出始めている5作目です。
とはいえ、同じハードでも後期のタイトルになってくると、初期作品よりかなりグラフィック・演出の強化を実感できます。
ステージギミックも、重力反転や水上バイクなど、よりアトラクション的で豪華なものに。
難易度の低下も『4』から更に進んでおり、シリーズの中でも簡単な部類。
とにかく1UPのドロップ率が高く、また大抵の場面はチャージショットで十分対応可能なので、サクサク進める印象が強いです。
終盤はさすがに難しい地形も出てきますが、それもラッシュジェットで容易にスルー出来たり。
比較的気軽に楽しく遊べるロックマンと言えるでしょう。
ただ、チャージショットが頼りになりすぎるので、もう少し武器の使い分けを楽しめる場面が用意されていても良かったとは思います。
武器の性能が悪いわけではないのですが、グラビティー以外あんまり使わなかったので。
あと個人的にチャージマンやダークマン1号2号みたいな系統のボスが苦手であんまり好きではなかったり。
こちらにまとわりつくように体当たりしてくるの鬱陶しい……!
ロックマン6 史上最大の戦い!!
1993年発売。同一ハードでまさかの6作目。
ファミコン最終作なだけあり随所に気合を感じる本作ですが、最大の特徴はラッシュとの合体機能。
パワフルなパンチで固い敵やブロックを破壊する"パワーロックマン"、
ホバーで高く飛ぶ"ジェットロックマン"の二形態に変身できます。
ラッシュコイルや特殊武器などと異なり、弾数制限が無く、ロックマンの操作性自体に変化があるのが面白いところ。
フォームチェンジのテンポが少し悪いものの、使い所も多く用意され、新機軸の面白さを出せています。
難易度は5と同じかそれより少し難しいくらい。
やっぱり特殊武器の存在感は薄めですが、合体の切り替えが楽しく、個人的にはファミコンロックマンの中でも上位に来るくらい好みのタイトルです。
また、世界各国の強豪ロボットが集まったというストーリーのため、国際色豊かなロボット・ステージのデザインも見所となっています。
ロックマン7 宿命の対決!
1995年発売。ようやくスーパーファミコンへの移行を果たしました。
世代交代の効果は大きく、グラフィック・演出も大幅パワーアップ。ポップなロボット世界がより活き活きと表現されるようになりました。
それに伴い、特殊武器のギミック干渉要素も強化。
止まっている装置に電気を流して起動させたり、溶岩流を凍結させて道を作ったりと、特殊武器を使った遊びが多く用意されています。
また、ステージ中に様々な強化アイテムが隠されており、ギミックを活用してそれらを取集することも。
これまでもちらほらとあった要素ではありますが、本作では特にアイテム数が多く、同時期に展開されていた『ロックマンX』の影響を感じますね。
見つけられなかったアイテムも、敵がドロップする"ネジ"を集めて購入することが可能。
残機やE缶も買えるので、救済要素としても機能しています。
他にも、チュートリアルとプロローグを兼ねるOPステージが追加されたり、8ボスステージが前半と後半で4つずつに分かれていたりと、全体の流れも刷新されています。
前作にあったラッシュとの合体要素は、パワーとジェットを足して2で割ったような”スーパーロックマン”に統合。
移動能力も攻撃力も高いので活用できる箇所は多いものの、かといって万能ではないというバランス。
ちなみに今回、解禁にはアイテムを探して集める必要があります。
これ以降ライバルとなる"フォルテ"も登場。
まだあまりキャラが安定していませんが、終盤の合体変身対決は熱いシチュエーションで見ものです。
様々な部分でパワーアップし、より活き活きとした世界を描くようになった本作ですが、ちょっと気になるポイントとしては、
- キャラ絵が大きすぎて画面が狭く感じる。
- 属性攻撃の被弾モーションが長い。
- 隠しアイテムの場所(ラッシュサーチを使う場所)がわかりにくい。
- ラスボスだけそれまでと比べ異様に難しい。
といったところでしょうか。
余談ですが本作、製作期間はたったの3ヶ月。(※)
この短期間で上記のような多種多様な要素を破綻なく組み込んでいるのですから驚きです。
なんでも、モチベーションの高いスタッフが集まっていたそうで。
(※) 出典:R20+5 ロックマン&ロックマンX オフィシャルコンプリートワークス P.64
ロックマン8 メタルヒーローズ
1996年発売。プラットフォームはプレイステーション/セガサターンへ移行。
ドット絵のクオリティは円熟期に達し、今時のインディーゲームと比べても遜色ないレベルに。
描き込みの細かさはもちろん、良く動くので見て楽しく、動かして気持ちいい。
ボイスも付いて非常に華やかな内容になりました。
物語の要所ではアニメムービーも挿入され、苦しみながらも平和のために戦うロックマンのヒーロー性がクローズアップされています。
ゲームシステムについては、本作独自の仕様が多め。
ネジは『7』や『9』以降と異なり、敵からのドロップではなく決められた個数がステージに隠されているという形式。
集めることで強化アイテムと交換できますが、ネジを全て集めても全てのアイテムは獲得できないので、取捨選択が必要です。
チャージショットの性能を変えられるアイテムなんかもあるのが面白いところ。
その他にも、
- 水中で"泳ぎ"アクションが可能。
- ラッシュの能力が一新。
- 8ボスとは別に最初からひとつ特殊武器を持っている。
- 特殊武器使用とバスターのボタンが分かれており、特殊武器装備中もバスターを併用できる。
などなど。
前作同様、8ボスステージは前後半に分かれており、後半ステージでは前半ボスの特殊武器を使ったギミックが組み込まれています。
ランアクション的なスノーボードやシューティング、ちょっとした迷路やパズルもあり、バリエーション豊か。
独自の魅力を多く持つ本作ですが、なんと『1』以来のE缶無し。
コンティニュー周りの仕様が色々やさしくなったりもしてはいますが、やはりE缶頼りのガバガバゴリ押し攻略はできないというところで、難易度の下限がやや高めに設定されているという印象はあります。
特にスノーボードパートはごまかしが効かず、難易度の高さを指摘される部分です。
といっても流石に『1』のような難しさはありませんし、丁寧に調整された適切な難易度曲線を描いています。
個人的には、よく練られたボスの動きも含めてかなり好きな調整なので、オススメしたい作品であります。
ロックマン9 野望の復活!!
2008年発売。Wii/PS3/XBox360でリリースされた約12年ぶりの新作は、まさかのファミコン風での復活と相成りました。
当時は今のようにレトロスタイルのインディーゲームが蔓延ってはいない時代ですので、ある意味時代を先取りしていたと言えます。
ちなみに本作の開発は『ロックマンゼロ・ゼクス』シリーズを生み出し、現在もレトロアクションメーカーとして知られるインティ・クリエイツです。
チャージショット・スライディング無し、代わりに特殊武器は強力なもの揃いと、ファミコンロックマンの中でも特に『1』,『2』への原点回帰を意識したとみられるつくり。オープニングステージもありません。
一方、ネジと交換でE缶などのアイテムを補充出来たりと、遊びやすさを残した部分もあります。
しかし何故かLRでの武器切り替えは残っておらず、ちょっぴり不便。
本作の特徴はその難易度。
様々なギミック・トラップを駆使し、とにかくあの手この手でプレイヤーを殺しに来ます。
インティクリエイツを許すな #ロックマンクラコレ #金のロックマンamiiboが当たる https://t.co/EAIznuHw3h #NintendoSwitch pic.twitter.com/lCA9RZ1EGE
— 紅茶 (@tea_creates) 2018年6月20日
ほとんど一発ネタみたいな初見殺しもあり、「こ、今度はこう来たか~!」と笑わせに来る、さながら即死ギミック博覧会。
「トゲが多い」とよく言われるゲームですが、トゲへの誘導の仕方にバリエーションがあるので飽きることはありませんし、コツを掴めばあっさり避けられるので、意外とよくできているのです。
とはいえ、ヒーローモードやスーパーヒーローモード(※)は悪ノリが過ぎると思う部分もありますが。
ステージが難しい分、特殊武器はどれも扱いやすく、かつ非常に強力。
使い所もしっかり用意されており、ハズレ武器はありません。
ロックマンは特殊武器を使って難所を爽快に切り抜けるのが最大の魅力だと思っているので、個人的にはかなり好きなゲームバランスです。
探索・収集要素が無くなり、難所の攻略に要点を絞ったところも評価点。
『1』,『2』が示した「答え」のあるアクションゲームというロックマンのゲーム性を、インティ・クリエイツらしい味付けで調理し直したようなタイトルと言えます。
ただ、即死の多さに加えて操作テクニックを求められる場面もそれなりにあるので、合わない人には合わないバランスだとも思います。
あとBGMもハイテンポで気分を熱く盛り上げてくれる名曲揃いなのも推しポイントです。
ちなみに本作、ブルースで遊べるモードもあります。(※)
ブルースはチャージショット・スライディング付きで、ジャンプ中に前方の敵弾を防ぐシールドも持ってますが、その代わり被弾時のダメージは大きめ。
『4』以降のロックマンに近いものの、単なる上位互換ではないように調整されています。
(※) オリジナル版ではDLCですが、クラシックスコレクション2には最初から付属
ロックマン10 宇宙からの脅威!!
2010年発売。前作『9』が好評を博したためか、同じレトロスタイルでもう一本作られることになりました。前作同様、開発はインティ・クリエイツ。
今回はLRでの武器選択が復活し、ゲームオーバー時もショップを利用できるようになるなど、細かいシステムが改善されています。
ゲームバランスも前作から少し変化。
難しいことには変わりませんが、トゲが減ってザコ敵が増え、即死よりも物量によるダメージの蓄積で殺しに来るようになりました。
一方で特殊武器は『9』ほどのべらぼうな強さはないので、しっかりと使い所を見極めて対処する必要があります。
難易度の高さは据え置きにしつつ、全体的に『9』とは異なる方針で調整されており、こちらも人によって合う合わないは出てくるかもしれません。
個人的には『9』ほどじゃないけどこれはこれであり。
本作では初代シリーズでは初となるイージーモードが追加されました。
足場が追加されてトゲを塞いだり、ザコ敵の数が減ったり、ボスの攻撃パターンが易しくなったり。
ちょっとやりすぎ感もありますが、至れり尽くせりで初心者にも安心です。
一方、ハードモードは相変わらずインティ・クリエイツの悪ノリ感が強め。引くほど敵配置が多い。
また、ロックマン・ブルースに加え、フォルテもプレイアブルとして参戦。(※)
『ロックマン&フォルテ』と同様、発射向きを変えられる連射バスターとダッシュを備えています。
残念ながらダブルジャンプはできませんが、連射バスターの存在によって、ロックマン・ブルースとは一味違ったプレイングが可能です。
ゴスペルとの合体による飛行も可能で、結構チート性能。
さらに、『ロックマンワールド』シリーズで"ロックマンキラー"として登場した3体のボスと戦えるスペシャルステージもあります。(※)
クリアすれば特殊武器が手に入り、本編でも使用することが可能です。
記念すべき10作品目ということもあり、色々と盛り沢山の豪華な内容になっていますね。
(※) オリジナル版ではDLCですが、クラシックスコレクション2には最初から付属
ロックマン11 運命の歯車!!
2018年発売。『10』からさらに待つこと8年、ロックマン30周年記念作品としてリリースされた現状の最新作です。
『8』以来、実に22年ぶりにグラフィックが一新。3Dで生まれ変わり、特にエフェクトの美しさが目を惹きます。
一方で、随所にルーツであるファミコンらしさを残しており、特にアクションの操作感はファミコンロックマンの軽快さを高い精度で再現しています。
絵が3Dになると動きにモッサリ感が出たり、視認性が下がったりということがよくありますが、本作はその問題を見事にクリアしています。
チャージショット・スライディングも復活し、ラッシュをワンボタンで呼び出しできるようになったりとシステム面で細かいところも改善されています。
特に便利なのが右スティックでの特殊武器選択。LRでの切り替えよりさらにスムーズになりました。
『9』,『10』の流れを汲んでか、難易度は高め。
一つ一つのステージが従来より少し長くなっていることもあり、歴代でも屈指の難しさです。
苦戦は必至の道のりですが、よく観察してパターンを学べばバスターだけでも完全に攻略でき、また一方では大胆にも、特殊武器でギミックを丸ごとスキップすることすら本作では可能になっています。
この、高難度アクションとして非常に丁寧に練り上げつつ、「答え」のあるアクションゲームとしての側面も強調したレベルデザインが実に見事。
昨今ではむしろ珍しくなってきた残機制を貫き(※)、スムーズに進めれば1時間以内にクリアできるボリュームを維持するなど、ファミコン生まれのアイデンティティーを強く感じさせつつも、純粋なクオリティの高さで現代に通用するものに仕立て上げています。
(※) 最低難易度の"NEWCOMER"を除く
標準難易度の"ORIGINAL SPEC."は前述の通り高難度ですが、より多様なプレイヤー層に対応すべく、4つの難易度を選択できるようになっています。
それほどの難しさは求めない人向けに落下死をなくしたり便利機能をフル搭載した"NEWCOMER"や、
久しぶりにロックマンを遊ぶ人向けに残機やリトライポイントを増やして少しだけ遊びやすくした"ADVANCED"、
ボスを更に強化した"EXPERT"まで、幅広く丁寧に対応しています。
そして本作の目玉は、新要素である”ダブルギアシステム”。
"スピードギア"発動中は全体がスローになり、相対的にロックマンが普段より速く動けるようになります。
攻撃の回避はもちろん、ロックマン自体のスピードも少し緩やかになるため小さい足場を渡るような精密操作の補助としても有効に働きます。
"パワーギア"は攻撃性能の強化。
ダブルチャージバスターで敵のガードをぶち抜いたり、特殊武器を強化してボスを圧倒したり、ここぞという場面で上手く決まると非常に爽快な力を得られます。
難所はまずスピードギアで敵の動きを観察しつつ冷静に対処。慣れてくるとギア無しでも攻撃を避けられるようになり、逆に隙を突いてパワーギアで強化した攻撃を叩き込む!
といった具合に、初見時の難易度を緩和しつつ、上達した後の爽快感を向上させるのにも役立っており、ロックマンのゲームデザインとマッチした、非常によく練られた新要素となっています。
また、ロックマンだけでなくボスも大技としてギアを使ってくるので、戦いを盛り上がる要素としても役立っています。
ロックマンとは何かを改めて見つめなおし、「答え」のあるアクションゲームとして練り上げ、さらにダブルギアでその魅力を拡張した、ロックマンとしてもひとつの高難度アクションとしても非常に完成度の高いタイトル。
ステージの長さと、"ORIGINAL SPEC."以上の難易度におけるミスした際の"戻された感"は少々気になるところですが、それを差し引いても余りあるクオリティ。
諸々のシステム改善と初心者から熟練者まで配慮した難易度選択式によって遊びやすさもシリーズ随一となっており、「今ロックマンを遊ぶなら間違いなくこれ!」と胸を張ってオススメできる一作です。
総評
シリーズの原点であり、「ロックマンとはどんなゲームか」を体現する『1』,『2』
どこか哀愁を漂わせる、作品の世界観を印象付けた『3』
難易度を下げて遊びやすくしつつ、ファミコンの表現力を高めていった『4』,『5』,『6』
新ハードでポップな世界観を鮮やかに描き、多くのアイデアを詰め込んだ『7』,『8』
原点回帰を図りつつ、インティ・クリエイツらしい味付けで再調理した『9』,『10』
ロックマンらしさを再解釈し、練り上げた上で、ダブルギアによってその魅力を拡張した『11』
改めてシリーズを通して遊んでみて、総じて完成度が高く、安定感のあるシリーズだと感じました。やっぱり本家は風格が違います。どこを取っても面白い。
初期作品はその古さ故、どうしても多少遊びにくさや粗削りに感じる部分もあるものの……それでもファミコンタイトルとしては破格のクオリティ。
ロックマンらしい魅力が特に詰まっているのは『1』『2』『9』『11』ですが、個人的には『6』『8』辺りも独自の魅力があって好きです。
ただやはり、これからロックマンを遊ぶ人に最もオススメなのは最新作の『11』。
そこから興味を持った人は、『クラシックスコレクション1+2』でシリーズの歴史を拾っていくのも良いでしょう。
冒頭、A.K氏の言葉を引用して「ロックマンは『答え』のあるアクションゲーム」と述べましたが、A.K氏はその後以下のように文を続けています。
私はゲームを面白くするために、今まで見たことのない難しいトラップを考え、とても行けそうにないステージをたくさん設定しました。そこは、たとえすぐにクリアー出来なくても、特殊武器やアイテムという『答え』を使えば、絶対に行けるのだから大丈夫と考えていたのです。しかし、実際はそうではありませんでした。いつも「難しい!」と言ってあきらめていたみんなが、そのゲームよりはるかに困難な、難度の高いステージを、自ら武器もアイテムも使わず、一所懸命に挑戦しているのです。私はなにか申し訳ない気持ちになりましたが、そんなみんなのがんばりを見て素直に感動していました。何度も倒れ、また立ち上がり、そうしながら小さな青いヒーローはプレイヤーと共に成長していったのです。
~新装版 ロックマンマニアックス 下巻 短編・設定&対談編 P.193より引用~
ロックマンは「答え」を見つけるのが面白いゲームではありますが、「答え」が見つからなくてもなお挑戦したい、あるいは見つけた上でそれを使わずに突破したいと思える魅力を備えた、楽しいアクションゲームでもあります。
幾度も挑戦しながら自分なりの「答え」を探し出し、指先に感覚を刻み込む快感は、言葉や映像では決して伝わらないもの。
是非、実際にプレイして確かめてみて下さい。