2Dアクション好きのゲーム日記

ゲームについて書く。2Dアクション多め。

考察:『メトロイドプライム4』が描く「間に合わなかった英雄」と「雑兵たち」の物語

 

本記事は『メトロイドプライム4』のネタバレを含みます。

本編クリアまでの内容、および100%クリア後にギャラリーで解放されるムービーについて触れているので、閲覧の際はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

『メトロイドプライム4』を遊んだプレイヤーの大半が、ゲーム後半までに一度はこう思ったことがあるのではないでしょうか。

 

サイラックス、全然本筋に絡んでなくない?

ラモーンと全然関連性なく、たまにちょっかいかけてくるだけの人になってない?

 

 

銀河連邦の兵士たちにも似たような印象は持っていました。

まぁいいキャラしてるヤツもいるけど、別にいなくても成立するような……
いつも通りサムス一人の孤独な冒険として、ラモーン滅亡の歴史を追いかける流れでも別に良かったんじゃない? とか。

鉱山で急に命懸けのリレーで助けてくれたけど、結局全員生きてるしあのくだりなんなの? 本当に必要だった? とか。

 

終盤まで要素がバラバラでまとまりのないように思え、腹落ちしないものを抱えていました。

そう、終盤までは。

ラスボス戦直前という最終局面においてサイラックスの過去が断片的に開示され、さらに100%クリア後のムービーでその詳細が語られることで、バラバラに思えていた点と点が一気に繋がって、全ては一つのまとまった物語のために必要なピースだったことがわかり、大きな衝撃を受けました。

今回は、そんな『メトロイドプライム4』のストーリーに対する自分なりの答えをまとめていこうと思います。
まぁ半分は妄想みたいなもんですが、お付き合いいただければ幸いです。

 

 

ラモーンとサムス・アラン

まずは本作の物語の基盤である、主人公サムス・アランとラモーンについておさらいしておきましょう。

物語の舞台である惑星ビューロスでかつて栄え、そして滅びた種族、ラモーン。
そんなラモーンの予言に記された「選ばれし者」サムス・アラン。

彼らの関係は、「救いを求めて待ち続けた者」「間に合わなかった救世主」であると言えるでしょう。

 

まず、ラモーン滅亡の歴史について改めて確認してみましょう。

ラモーンは高度に発達した機械文明を築き上げたものの、その代償として資源の枯渇に悩まされていました。

実際、ビューロスの荒廃度合いはかなりのものです。

機械文明時代に砂漠を渡るための移動手段としてヴァイオラが発明されていたことなどを踏まえても、その時には既にソルバレイは現在と同じ広大な砂漠と化していたのは間違いありません。

そしてその他の地域も火山や氷雪地帯などの厳しい環境ばかりで、まともな自然はもはやフューリーグリーンくらいにしか残っていません。
当時のラモーンの生活圏もかなり脅かされつつあったものと思われます。

 

ラモーンはその対策として、2つの施策を行います。

1つはこれ以上資源を消費しないための改革。
すなわち、機械文明からの脱却と、サイキック文明への移行です。

それまで一部のラモーンだけが先天的に備えていたサイキック能力を全てのラモーンが扱えるようにするため、彼らは頭部にサイキック・クリスタルを埋め込みました。

生まれつきの体質によるラモーンの格差を埋める意味合いでも、良い施策ではあったのですが……

後のことを考えるとおそらくほとんどのラモーンがサイキック・クリスタルを埋め込んでいたようなので、この施策に関してはある程度上手く行っていたのでしょう。
機械に頼らない技術を発展させることで、彼らは残り少ない資源を守る術を得ました。

 

もう1つの施策は、自然環境を回復するための緑化運動。
火山の超大型キャノンを用いた、グリーン・エネルギー(GE)の散布です。

フレアプールで取得できるログの中で「ソルバレイの地を豊かに蘇らせよう」との記述があるほか、フレアプール入り口近くでスキャンできるシャトヤのメッセージ中でも「かつてビューロスは過酷な環境だった」「動植物の繁栄をもたらしたいと願った」と言及されていることからも、やはりこのとき既にソルバレイは荒廃しており、GEシャワーの散布はその自然環境の回復を目的としたものであることが示されています。
「蘇らせる」と言うからには、かつてのソルバレイは自然豊かな土地であり、それを取り戻したかったのでしょう。

しかし、これこそが最大の過ちでした。
自らが浪費した自然を、都合よく蘇らせようなどという驕り高ぶった行いは、いつどんな世界においても上手く行かないものです。

当初、GEシャワーの散布は大きな成果を出してはいなかったようですが、彼らはGEの純度と量を上げることで生物活性化の効力を高めようと試みました。
結果、高濃度のGEシャワーはサイキック・クリスタルを埋め込んだラモーンの細胞に異常な変化を与え、凶暴な生物「グリーバー」へと変異。

サイキック能力の付与による平等で恒久的な社会、そしてグリーン・エネルギーによる自然の再生というラモーンの願いは、彼ら自身を知性無き怪物へと変貌させるという皮肉な結果に終わりました。

この流れに関しては正直に言って、ラモーンたちの事前の検証があまりに杜撰すぎるのではないかと誰もが指摘せざるを得ないところではあります。

一応仮説を立てるのであれば、先天的にサイキック能力を持ったラモーンでしか検証が行われておらず、それで問題ないと判断されてしまった(ラモーン的には先天的なサイキックの有無で区別されることがほとんどなくなっていたので問題視されなかった)という説や、ビューロス上空の高い高度の大気に一定以上の濃度のグリーン・エネルギーが接触することでしか発生しない、事前の実験環境では確認されなかった未知の反応が起きてしまった(故にアイスベルトの室内環境での再生実験は上手くいかなかった)説など、色々考えられそうではありますが……

フレアプールでのログの中に「失敗は許されない」という文言もあるあたり、これが駄目でももう後に引けない、あるいは時間的・資源的な制約により大規模な検証をゆっくり行うような余裕がない、などといったかなり切迫した事情があった可能性もあります。

まぁ、だとしてもそこまで追い詰められるほど資源を消費し、環境を破壊してきたのもまた、機械文明時代のラモーンではあるのですが……

 

なんにせよ、この「大いなる悲劇」によってラモーンは滅びます。

僅かに生き残った者たちがグリーバーを元のラモーンに戻す実験を試みるも、残念ながら失敗。
最後の砦であるクロノタワーに集まったのは、たったの13人でした。

13人。
希望はまだあると語るには、あまりに手遅れな人数です。

仮に地球上の人類がみんなゾンビ化して生き残りが自分入れて13人だったら、心境はもう「絶望」なんてもんじゃ済まないでしょうね。
地球人がそうなるとしたらラモーンなんかよりよっぽど酷い経緯が想像できますが、きっと「人類は愚か」とか言ってる余裕も無いと思います。

 

生き残ったラモーンたちは、予言に記された「選ばれし者」に最後の希望を託します。
ここまでなんでも技術力で問題と向き合ってきたラモーンも、最後の最後は神頼みに等しい予言に縋るしかないというのが無常。

13人のうち12人が救世主を探すために旅立ち、最後の司祭シャトヤがマスターテレポーターを守るため、そして救世主を迎え入れ導くためにビューロスに残りました。
しかし、誰も救世主を見つけることはなく、ラモーンは誰にも知られることのないまま、その歴史に幕を下ろします。

 

それから長い時を経て、経緯は不明ですが、旅立ったラモーンが遺したビューロスへの帰還用テレポーターが銀河連邦の手に渡ります。
連邦にとっては未知のアーティファクトであり、慎重に扱うべきところですが、そこへサイラックスが襲撃。

戦いに巻き込まれる形でテレポーターは暴走し、サムスやサイラックスを含む周辺の物体を飲み込んでビューロスへと転送する大騒ぎに。
そうして本作の物語が幕を開けます。

テレポーターの暴走に関しては、こんな厄介なものを処分せずに放置して逝くなよとラモーンに対して思わないでもないですが……
よくわからないものを剥き出しのまま運搬している連邦に、所構わず発砲するサイラックス、後ろに防衛対象があるのに不用意に攻撃を避けるサムスなど、全員が満遍なくガバをやらかしているので、まぁ致し方ない結果かと思います。

 

すったもんだはありつつ、ようやく救世主がビューロスの地に降り立ちます。
生きたラモーンは既にいないものの、司祭シャトヤが残した立体映像によってサムスは導かれ、「ラモーンの歴史と知識が詰まったメモリーフルーツを作り出し、それを新たな地に運ぶことでラモーンの魂を後世に伝える」という使命を授かるわけですが……

言ってしまえばこれは、ほぼ「遺品整理」に近しいものです。
「ラモーンを救う」という文言に対しては、やや消極的な頼み事に思えます。

普通、救世主というからには「グリーバーを全員元に戻してくれ」くらいの要望を言ってきそうなものです。

シャトヤは「選ばれし者」に遺したメッセージ中で、生きて「選ばれし者」を迎え入れられることを信じていると語っています。
一方で、シャトヤは当初から「選ばれし者」が間に合わないこと前提の準備を進めていました。

最後の司祭として心を強く保ち希望を語りつつも、現実は決してそう上手くはいかないことを受け入れていたのでしょう。
救世主が間に合わないことを。仮に来たとしても、グリーバーはもう決して元には戻らないことを。

絶望の淵に立たされたラモーンたちの最後の祈りは、ただただ「弔ってほしい」という、もはやそれだけだったのではないでしょうか。

ビューロスの存在する宙域は、サムスや銀河連邦の活動する星系とは異なっており、次元を超えたところに存在しているものと思われます。

マスターテレポーター起動時、世界線そのものを切り替えて選択するような操作が見られます。サムスたちのいる星系とは存在する宇宙そのものが異なり、単に距離的なものを超えた隔たりが存在するようです。

もしかしたら周辺の星には、ラモーンの他に知的生命体は全くいなかったのかもしれません。
もし頼る相手がいたならば、どこの宇宙にいるかもわからない救世主よりそちらを先に訪ねたでしょうから。

長きに渡り待ち続け、最後にどうしようもない孤独を抱えたラモーンは、こことは違う新しい世界に自分たちが生きた証を残すことで、誰かに知って欲しかったのかもしれません。

その孤独を癒すことこそが、彼らにとって最後に残された、唯一の「救い」だったのでしょう。

 

このように、サムスが果たすべき役割となったのは「弔い」でした。
実際、いかに最強無敵の英雄と言えど、既に滅んでしまった文明を救うことはできません。

サムスが生まれるより遥か昔にラモーンは滅んでいるので、今回の件でサムスに全く落ち度はありません。
それでも、これほど救いを求めていた者たちに、何も手を差し伸べることはできなかった、その土俵に立つことすらできなかったというのはサムスにとっても無念が残る出来事だったと思われます。
グリーバーも結局そのままですし。

グリーバーに与えられる「休息」とはなんだったのか?

本作の時系列について、週刊ファミ通2026年1月8・15日合併号のインタビュー*1において『スーパーメトロイド』の後で、『メトロイドフュージョン』の前という設定が語られています。この間には『METROID Other M』も含まれますが、おそらくそれよりも後でしょう。

本作のサムスは自身が持つ強大な力に伴う責任や周囲からかけられる期待に対してかなり自覚的であるように思われる描写が節々に見られますが、『Other M』の出来事を経験した後のサムス、ということであれば確かに納得のいくものになっています。

タイムリーなことに、少し前に更新された『葬送のフリーレン』147話でも、下記のような台詞がありました。

「戦乱の絶えない南側諸国では、"その場にいない" たったそれだけの理由で百戦百勝の戦士が負けるのだ」

サムスもまた同じように、「間に合わなかった」というだけで無念を抱えることになりました。
理不尽な話ではありますが、強すぎる英雄に課される期待というものは、概ねそうした側面を持っているのだと思います。

 

ゲーム的にはあまりに何もなく密度に乏しいことが問題となっているソルバレイですが、寂しい砂漠という「死の世界」にそびえ立つクロノタワーは巨大な「墓標」のようであり、「弔い」の物語である本作のシンボルとしてはかくあるべきだったのではないかと、ストーリー面での落とし所としてそのように考えています。

 

サイラックスとサムス・アラン

本作でサムスの前に立ち塞がる敵、サイラックス。
興味深いことに、サイラックスから見たサムス・アランもまた、「間に合わなかった英雄」という要素を持っています。

 

まず、サイラックスが銀河連邦とサムスを恨むようになった発端の出来事を振り返りましょう。

サイラックスはかつて、銀河連邦の兵士でした。
一般兵と異なる青いアーマーを装備し、複数の部下を引き連れていることから、現場で部隊を指揮する隊長のような立場だったのでしょう。

デューク軍曹のアーマーにも右肩の部分に一般兵には無い青いパーツが付いていますが、サイラックスはそれより青い箇所が多いことから、より高い階級だったのではないかと思います。
(サイラックスの上官も青いアーマーかつバイザーが黄色くなっていて、『Other M』のアダム隊などの連邦兵士に近いカラーリングになっていたりするので、アーマー色によって階級が区別できるよう意図したデザインになっていると思われます)

 

スペースパイレーツと思しき軍団との交戦中、サイラックスは敵の新兵器を発見します。
サイラックスは上官に対し新兵器を奪う作戦を提案しますが、却下され、現地に向かっているサムスと合流するよう言われます。

しかし、サイラックスはこの命令を無視。部下に作戦続行を告げ、新兵器へと突撃します。
その後間も無く、無情にも新兵器が起動。その攻撃によって周囲は跡形も無く消し飛んでしまいます。

サイラックスは咄嗟に地形の窪みに隠れてなんとか助かったものの、部下は全滅。突撃の指示を出したサイラックスだけが生き残る結果となりました。

この時のサイラックスの判断が正しかったのかどうかはわかりません。

攻撃の規模を見るに、上官の命令通りにサムスを待っていたところで結局全員死んでいた可能性もあります。

結果的に失敗はしたものの、一刻も早く兵器を止めようとする判断は現場の指揮官としては正しく、現場を知らない上層部に無下にされ、捨て駒同然の扱いを受けたがために部隊は壊滅した、という解釈は可能です。

一方で、単にサイラックスが功を焦った結果、部下が犠牲になったというようにも見えます。

命令通りに前線の維持に努めていれば相手も迂闊に攻撃はせず助かったものを、まんまと釣られて突出した結果、迎撃を受けた。そのようにも見て取れます。

少なくとも、この結果を受けた連邦軍上層部は後者のように考えるでしょう。
引いていれば助かったのではないか? だから待てばよかったのに、と。

この辺は判断財力が少なく、メックが跡形もなく消し飛んでいる一方、サイラックスはだいぶ浅い窪みで伏せてるだけで助かったりしている描写のガバガバさ加減もあって、明確にこうとは言えません。

こんな窪みで助かる規模の攻撃じゃなくない?

なんにせよ、サイラックス隊は全滅します。
ただ一人生き残ってしまったサイラックスの前に、サムスが到着。
多くの兵を殺し尽くした敵兵器を、たったの一撃で破壊してしまいます。

 

この時サイラックスが感じていたものは一体何でしょうか。

一つはやはり、罪悪感でしょう。

司令部の命令を無視した自分の指揮が一因となって部下を大勢死なせてしまったのですから、その死に対して責任は感じていたものと思われます。
震える自分の手を見つめるサイラックスの目線にも、罪の意識が見て取れます。

また、この回想ムービー自体が、サイラックスがラモーンのヒーリングポッドの中で記憶をフラッシュバックさせているような形式になっていることから、この出来事はサイラックスにとって今も消えないトラウマであり、悪夢となって襲いかかって来ているのだと思われます。

そう、サイラックスって敷島浩一なんですよ。

 

同時に、サイラックスは行き場のない怒りを抱いていたことでしょう。

サムスの到着があとほんの少し早ければ、誰も死なずに済んだのではないか、と。

もちろんサムスからしたら八つ当たりもいいところです。
サイラックス自身もおそらく、自分が抱いているのが部下を死なせた自分への怒りなのか、あるいは敵への怒りなのか、区別もついていなかったと思われます。

たまたま目の前にやってきたサムスを「間に合わなかった英雄」に仕立て、怒りの矛先を向けることで、自分の心を守るほかなかったのではないでしょうか。
今更やってきて何が英雄だ。部下はもうみんな死んだ後だというのに。お前は誰も救えてなんかいない―――

そうした怒りからか、サイラックスは差し伸べられたサムスの手を払いのけます。

そう、サイラックスって死柄木弔なんですよ。

 

サイラックスを支配した感情の、最後は無力感ではないでしょうか。

最強の英雄の一撃で全てが決してしまうなら、自分たちの存在意義とは一体なんなのか、と。

多くの兵士の命を奪った凶悪な兵器も、サムスにかかればほんの一撃。
あまりにも無慈悲です。

英雄が助けに来るのをただ待つことが正解とされ、英雄の行動一つで数多の兵士の生と死が決まってしまう。
そして、犠牲となって死んでいく多くの兵士には目もくれず、サムスばかりが英雄として讃えられる。

そんな世界の全てが、馬鹿馬鹿しくなってしまったのではないか。
自分自身が力を得て、英雄の存在を否定することで、この構造を覆したかったのではないか。

そう、サイラックスってエルピスなんですよ。

 

罪悪感と、怒りと、無力感。
矛盾を含んだ感情がぐちゃぐちゃに混ざり合い、壊れてしまった一人の兵士。

部下を失ったその日から終わらない戦争の悪夢に囚われ、自分たちを救えなかった不完全な英雄と、その英雄を賛美する社会を恨み、英雄の存在を否定するために力を欲する。
それがサイラックスという存在なのではないかと思います。

そうして力を得た現在のサイラックスは、かつて憎んだ強者の側、たった一人の強大な力で戦場を変えてしまう側の存在となり、かつての同胞だった兵士たちを殺戮しているのだから皮肉なものです。
矛盾した感情から生まれた行動は、やはり矛盾した結果を生み出す、ということなのかもしれません。

 

最後の一騎討ちの後、謎の空間で奈落に落ちていくサイラックスに対して、サムスはまたしても手を差し伸べようとします。

責任感の強いサムスのことなので、おそらくサイラックスの過去を垣間見たことで、サムスの側にも「あの時自分が間に合っていれば」という思いが芽生えたのではないでしょうか。
ただ、その思いがサイラックスを救うことは決して無いでしょう。

 

ラモーンとサイラックス

ここまで見てきたように、ラモーンとサイラックスには、英雄サムス・アランの手から零れ落ちた、「救いの手が間に合わなかった者たち」という、意外な共通点がありました。
自分たちの行いが遠因となって身を滅ぼしたところまで一緒です。

違う所があるとすれば、ラモーンはサムスを恨むことなく待ち続けて滅び、サイラックスは生き残ってしまったがためにサムスを憎むようになった、ということでしょう。

一見関連性の無い両者ですが、こう見るとサイラックスはビューロスに来るべくしてやって来たように思われます。

 

しかし、ラモーンにとっては望まぬ来訪者です。

サイラックスは転送時のいざこざによって負傷した状態でビューロスに送られ、クロノタワーのヒーリングポッド内で傷を癒しながら、同時にサムスに妨害を仕掛けてテレポーターキーを奪おうとしてきます。

精神感応波による遠隔操作で襲いかかってくるサイボット軍団や、サイラックスに擬態したサイボット、キーを守るガーディアンがサイラックス・メトロイドによって暴走させられていることなどが、その妨害工作の例と言えるでしょう。
このあたりの経緯はNintendo DREAM 2026年3月号のインタビュー*2にてより詳細に語られていますが……

精神感応波によって動くサイボット。サイラックスはクロノタワーを介して操っていたものと思われます。
ガーディアンも元は理性のある存在であると記録されており、サイラックス・メトロイドの影響で暴走しています。

 

実のところこれら以外にも、サイラックスによる妨害はあったのではないかと踏んでいます。
特に怪しいのが、ソルバレイでサムスに襲いかかってくる「マローダー」「エアロノート」といった兵器たち。

本作のプレイヤーなら嫌でも記憶に残っていると思いますが、砂漠を横断中に隙あらばネチネチと攻撃してきて、グリーン・クリスタルや他アイテムの回収を妨害してくる、憎ったらしいアイツらです。

これらはログブックによると、「大いなる悲劇」の後に生き残ったラモーンの技術者によって作られた対グリーバー用の兵器で、結局ラモーンがグリーバーへの攻撃を嫌ったために実践投入は行われなかったとされています。
つまり、本来動いているはずのない物なのです。

ラモーンのことなので、杜撰な管理と経年劣化によって勝手に暴走している可能性も捨てきれませんが……だとしても対グリーバー用の兵器が「選ばれし者」に襲いかかってくるのはおかしな話です。
他の侵入者を無差別攻撃するセキュリティ機器ならばともかく、「エアロノート」のログにはカメラで"グリーバーを"視認すると攻撃すると明記されています。

それがサムスを襲ってくるとなると流石に作為的なものを感じます。
大方、これらの兵器も眠っていたところをサイラックスによって掘り起こされ、サムスを襲うように命令を書き換えられていたのではないでしょうか。

アイスベルトのスノーウルフを始めとする原生生物やグリーバー、老朽化した設備など、元々サムスの障害となっていたであろう物も多くあるものの、それでもサイラックスの妨害さえ無ければビューロスの探索はもっと劇的に楽だったのではないかと予想しています。

少なくともキーガーディアンたちが正気であればボス戦はほぼスキップできたでしょうし、フレアプールでのサイボットとの連戦などの難所も発生しません。
さらに言えば、ビューロス到着時に装備が失われているのもテレポーターが戦闘に巻き込まれて暴走した影響と思われますし……

ラモーンも所々で「選ばれし者」を試してくるような仕草はありますが、それでもここまで色々手間が増えることは想定に無かったのではないでしょうか。
ビューロスでの苦労の半分くらいは、サイラックスのせいと言っていいでしょう。多分。

 

なお、作中に登場しないガーディアンが一体いますが、おそらくオメガ・グリーバーにやられてしまったのではないかと推測。

 

サイラックスと連邦兵士

最後にスポットを当てるのは、サムスやサイラックスと共にビューロスへと飛ばされて来た連邦兵士たち。

彼らは以前のサイラックスと同じ兵士ですが、その実サイラックスとは対極の存在であり、その関係は「英雄のためにその身を捧げた者たち」と、「そうできなかった者」であると言えます。

 

彼らには部隊としての名称が無いので、ここでは仮に「ビューロス隊」と呼称することにしますが……

ビューロス隊の印象的なイベントと言えば、グレートマインズにおける共闘が思い出されます。
「ここは俺に任せて先に行け」を順番にやっていく、あの流れ。

ビューロス隊の面々は、おそらく意図的に、モブ的というか「今回たまたま知り合って深く関わるようになっただけの、どこにでもいる普通の兵士」としてデザインされています。

これが歴戦の個性的なバウンティハンターとかだったら「ここは俺に任せて先に行け」をやられても「まぁこれくらいで死なないだろ」と思えますが、そうではない一般兵なものですから、凶暴なグリーバーの大群を前にしたら「この人たち本当に死んじゃうんじゃないか?」とハラハラさせられました。

一方で、初回プレイ時は「何故彼らはここまで身を張ってサムスのために戦おうとするのか?」というのが引っかかってしまいました。

グレートマインズでのミッションはテレポーターキーを入手するのが目的であり、さらに言えば元いた星に生きて帰るための任務です。
帰還が目的なのに命を投げ出していては本末転倒です。

確かにサムスは銀河全体の平和を守る英雄であり、必ず生きて帰さねばならない貴重な人材です。
一介の兵士より優先されるべき命であるということは、残酷な事実ではあるものの、理解できます。

とはいえ、ゲームを遊ぶプレイヤーとしての目線では、生き死にをかけたイベントをやるにしてはこの時点だとやや関係値が不足しているように思え、そんなに無理しなくてもじっくり安全に攻略する方法を探してからでもいいのではないか? と斜に構えて見てしまうところはありました。

しかも最終的に全員普通に生きてるもんだから、「よかった〜」とホッとする一方で、「え、じゃあ今のイベント何?」という困惑もあったのをよく覚えています。

 

彼らはラモーンやサイラックスとの関連性も低く、わりと終盤まで物語における彼らの役割、存在意義がわからず、モヤっとするものがありました。
しかし、同じ銀河連邦の元兵士だったサイラックスの過去が明らかになり、物語が結末を迎えた瞬間、バラバラだった点が線として繋がっていきました。

 

サイラックスは英雄サムスのための捨て石になることを拒み、英雄の存在を否定しようとする者でした。
一方でビューロス隊の兵士達は、自らその身をサムスのために捧げました。

サイラックスがなれなかった姿、対極の存在。
それこそが本作の物語において、彼らに課せられた役割だったのではないでしょうか。

そしてグレートマインズでの一件は、この「英雄のためにその身を犠牲にする者」としての役回りを強調し、最後の展開の前振りとして「彼らはいざとなったらこういうことをする人たちである」ということを事前に印象付けるための布石だったわけです。

 

そうした真逆の存在である彼らですが、ほんの少し巡り合わせが異なっていれば、彼らの運命は違っていたかもしれません。

サムスの到着が間に合っていれば、サイラックスは今のようになっていなかったかもしれません。
インタビューで「独善的で偏狭な性格」とまで言われているサイラックスのことなので、助かったとしても感謝などしないでしょうし、なんなら「手柄を取られた」などと言って結局反感を抱いていそうなイメージはありますが、とはいえそれでも部下を失わずに済んだなら、精神を病んで反逆者に堕ちることはなく、今も兵士をやっていたことでしょう。

あるいは、あの戦場にいたのがサイラックスでなくデューク軍曹だったら。
堅物で上官ともよく揉めたりするらしいデューク軍曹は、もしかしたらサイラックスと同じ道を歩むことになっていたかもしれません。

サイラックスとて、元はどこにでもいる普通の兵士。
誰しもサイラックスになり得る可能性があり、それがたまたまサイラックスだった。
それだけのことなのです。

 

物語の最後、ビューロス隊の仲間たちはサムスを無事に帰すため、サイラックスの攻撃からサムスとテレポーターを身を挺して守ります。
サイラックスの不意打ちでダメージを負い、テレポーターは暴走して長くは持たないという状況で、サムス(=プレイヤー)は仲間を見捨てる選択を迫られることになります。

この場面、放置しているとテレポーターが爆発してゲームオーバーになることを踏まえると、おそらく転送後に周囲の仲間たちも爆発に巻き込まれて死んでいると思われます。
そうでなくとも、サイラックスが自分の邪魔をした者たちを生かしては帰さないでしょう。

本作のプロデューサーの田邊さんは、インタビューにて最後の瞬間にAボタンを押すことに躊躇や葛藤を生み出したかったと語っています。
実際、この場面は私もまんまと悩まされることになりました。

しかし、繰り返しになりますが、ビューロス隊の仲間たちは今回たまたま親しくなっただけで、本来はどこにでもいる普通の兵士です。
その死は本来、ゲーム冒頭の戦場で散っていく名も知れぬ兵士たちや、敵兵器の光に消えていったサイラックスの部下たちの死と、何ら変わりのないものであるはずです。

冒頭ステージでは、動かなくなった兵士を他の兵士がスキャンする場面があります。おそらく仲間の生死を確認し、殉職した兵を正確に報告するための手続きだと思われます。

にも関わらず、ただ共に過ごした時間がほんの少しあっただけで、プレイヤーはマッケンジーやトカビ、デューク軍曹、アームストロング一等兵やVUEに感情移入し、その死を惜しんでしまいます。

彼らは自らの死を通して、散って行った他の兵士たちの命に目を向けさせる役割も担っているのかもしれません。

 

サムス・アランと失われた命

目の前で自分のために死ぬ者が出るのは、サムスにとってこれが初めてではありません。
ベビーメトロイドやアダム・マルコビッチがその例です。

行くべき者が行き、残るべき者が残る。

今回の結末は『スーパー』や『Other M』での別れを経験したサムスだからこそ受け止められるものであり、以前のサムスでは最後の決断は難しかったのではないかと思います。
時系列がこの位置に来ているのも納得です。

 

英雄サムス・アランの手からこぼれ落ちた、守れなかった者たち。救えなかった者たち。
本作は、ラモーンと、ビューロスで出会った仲間たち、そして名も知らぬ兵士たちへの「弔い」の物語であると言えます。

そして、華やかな英雄譚においては隅に追いやられる「雑兵」の無念と怒りを表すためにサイラックスが、それと対極にある誇りと献身を示すためにビューロス隊の仲間たちが、それぞれ物語に必要な存在でした。

一見してバラバラの要素でも、根底にはこうした確固たるテーマが根付いており、『メトロイドプライム4』の物語はシリーズの新たな地平を切り拓きつつ、これまで死んでいった者たちを悼む強いメッセージ性が込められているように思われます。

 

余談

作中では何度か、サイラックスとサムスの間で精神干渉を起こし、サイラックスの記憶がサムスの脳内に流れ込む場面があります。
このとき、同じようにしてサイラックス側にもサムスの記憶が流れ込んでいるのではないか? というのが気になるポイント。

もし続編でサイラックスが再び現れたとき、鳥人族との繋がりや銀河連邦所属時代の仲間など、サムスの過去を何か利用してくるのではないかと懸念しています。
そうなったらわりと本当に嫌かもな……