原点を超えろ。
概要
メーカー:インティ・クリエイツ
プラットフォーム:Nintendo Switch / PS4 / XboxOne / Steam
プレイ人数:1人
初リリース日:2021/07/29
価格:1,480円(税込)
熱いストーリー演出と魅力的なキャラクター、遊びやすく調整されたゲームバランスで人気の『ブラスターマスター ゼロ』シリーズ3作目にして完結作。
『ゼロ1』『ゼロ2』から難易度を大きく引き上げつつ、システムに増改築を加えて更なる魅力の掘り下げを行っています。
参考クリアタイムは11時間程度。
例によって、本レビューには前作までのちょっとしたネタバレを含みます。
続きものであることですし、できれば1作目から順々に遊んでほしいところですね。
シリーズ過去作のレビューはこちら。
『ブラスターマスター ゼロ』レビュー:熱いストーリーと程よい設計の探索アクション! レトロスタイルの良リメイク - 2Dアクション好きのゲーム日記
『ブラスターマスター ゼロ 2』レビュー:より遊びやすく、より熱く! 銀河を舞台にパワーアップした正統続編 - 2Dアクション好きのゲーム日記
始まりの星で、終局へと向かう物語
銀河を超える旅路の果てに、ついに「惑星ソフィア」へと辿り着いたジェイソン一行。
しかし安堵もつかの間、惑星ソフィア軍「ソフィアフォース」の攻撃を受け、ジェイソン、イヴ、フレッドは捕らえられ、離ればなれになってしまう。
突如基地内に発生した混乱の隙を突き脱出したジェイソンだったが、彼の前にソフィアフォース歴戦の戦士「ケイン・ガードナー」が立ちふさがる。
忽然と消えたイヴと、彼女を危険視するソフィアフォース。そして再び暴れ狂うミュータント。
イヴの行方を追い、ジェイソンはかつてない苦難の道へと足を踏み入れる―――
1作目のレビューでも触れた通り、『ブラスターマスター ゼロ』は『超惑星戦記メタファイト』を起源とするシリーズです。
今回はその完結作ということもあり、舞台である惑星ソフィア、主人公のケインやヒロインのジェニファーなど、『メタファイト』の要素が主軸に深く絡んできます。
特にケインがカッコいいんだこれが……まさにレジェンドというべき貫禄。
他にも、メタファイトを遊んだ人ならニヤリとできる「あるある」な小ネタも仕込まれています。
『メタファイト』はゲーム中で大きなストーリー展開があるわけでなく、正直ファミコンのゲームとしても遊びづらいところが多め。無理にクリアまで遊ぶのはオススメしにくいところですが、やっておくと本作がより味わい深くなります。
自機の近くにしか敵が表示されないから虚空から敵が湧き出るのと終盤の勝手に地形張り付き機能が本当に厳しい#ファミリーコンピュータ #NintendoSwitch pic.twitter.com/kQvOqboXRf
— 紅茶 (@tea_creates) 2021年6月5日
個人的にはSwitchOnlineで巻き戻しなどを利用して2~3面くらいまで軽く遊んでおくくらいが丁度いいかな。
宇宙を旅するワクワク感もあった前作と比べ、重たいシリアスムードが作品の大部分を占める本作。そんな中で印象的な存在になっているのが、前作でライバルキャラとして登場したライプニッツです。
驚きの登場シーンから始まって、ジェイソンと協調するでも対立するでもない微妙な距離感から来る凸凹したやりとりがたまらなく、元々好きしたが本作で更にお気に入りのキャラクターになりました。
シリーズの長所である、ロマンをくすぐる熱い演出も更にパワーアップ。
1作目にあったレトロなテイストはもはや面影程度に、ハイクオリティなドット絵やアクションが次から次に飛び出てきます。
今回特にボス周りの演出がこれまで以上にこだわり抜かれており、非常に盛り上がる戦いを楽しめます。
全体としては前作ラストのようなストレートな熱血展開と比べると終局へと向かう物哀しさのようなものが強調された本作ではありますが、その先にあるジェイソンとイヴの冒険の結末は、シリーズファンには是非とも見届けてもらいたいところ。
信じて!
さらなる進化を経て完成を迎えたアクションとシステム
ゲーム内容は、おなじみのサイドビュー+トップビュー混成探索アクション。
万能戦車「G-ソフィアSV」を駆使してサイドビューマップを探索し、ダンジョンを見つけたらパイロット単独によるトップビューでの攻略に移行。
ボスを倒して強化アイテムを手に入れることで、探索範囲を広げていく構成です。
前作『ゼロ2』から一部アクションを引き継ぎつつ、全体的なシステムの見直しと装備の一新により、またもや遊び心地に変化が加えられています。
サイドビューでは高所からの着地でSPを回復する「ガイアシステム」はそのままに、SPゲージをメイン用とサブ用の2本に分割しています。
これまではSPが切れるとホバーなどの移動スキルも使えなくなる都合上、SPを消費する特殊なメインウェポンの使用にやや慎重になってしまう傾向がありました。
しかし今回はメイン用のSPがシステムダウンしてもサブ用が生きていれば移動には差し支えないため、メインウェポンの使い分けが気軽にできるようになりました。
一見ゲージが増えてややこしいようですが、実際はメイン用のゲージはさほど意識する必要が無く、快適さのみを享受できる配慮の利いた改善となっています。
一方、トップビューは「ガンレベル」の仕様を中心に大きく刷新されました。
ここで少し寄り道ですが、ガンレベルというシステムが『メタファイト』を含めたシリーズ内でどのように取り扱われてきたかを振り返ってみます。
大元である『メタファイト』での仕様は以下の通り。
- ガンレベルが上がるごとにショット性能が変化する。
- 任意の切り替えは不可。
- 基本的にはレベルが高いほど強い(場面によっては逆に使いにくくなることもある)
この時点でガンレベルは「被弾してレベルが下がればどんどん弱体化してジリ貧になる」という取り扱いにくさを抱えたシステムとなっていました。
これが『ゼロ1』では以下のように、武器の使い分けが可能な形に拡張されました。
- 現在のガンレベル以下の武器を切り替えて使用できる。
- 各武器は異なる個性を持ち、一部を除いて単なる上位/下位互換の関係ではない。
しかし基本的には最高レベルの「ウェーブ」を連射していれば殆どの場面は容易く攻略可能であり、それ以外の武器の使い分けは(それでより有利に進められる場面もありますが)あくまでおまけ的な位置付けでありました。
ジリ貧問題に対しても、「レベルが下がると選択肢が減っていく」というリスクを残したまま、難易度自体を下げることによってレベルの低下を起こりにくくして蓋をした……とも言えます。
『ゼロ2』では少し難易度が上がりガンレベルの維持は難しくなった一方で、「カウンターさえ成功させればレベル1のショットでも全く問題ない」という調整に。
ピンチからの挽回は容易になったものの、ガンレベルというシステム自体の存在感が弱められ、武器の使い分けによる遊びも更に副次的な要素となりました。
そしてこれに続く今作『ゼロ3』では、
- ガンレベルに関わらず5つの武器をいつでも切り替えできる。
- ガンレベルは全武器共通で威力や範囲などの性能の上下にのみ影響する。
- カウンターは強力ではあるが『ゼロ2』ほど万能ではない。
という仕様へと大きくメスが入ります。
これにより、これまでの「ウェーブ/カウンターさえできればよく、武器の使い分けはやってもやらなくてもいい」というある種大らかな難易度調整は、「カウンターを含む様々な武器の使い分けこそが遊びの主軸。それができてはじめて十分な攻略ができる」という、従来よりしっかりした攻略が求められるスタイルへと変化しました。
そしてガンレベルのジリ貧問題に関しては、「性能が落ちる都合上レベルの低下はなるべく避けたい緊張感を残しつつも、仮にレベルが落ちても使い分けの意識さえできれば挽回の余地が十分ある」という形にすることで、「ガンレベルの特色を残した上でその短所をカバーし、新たな遊びに昇華する」ということをやってのけています。
これが実に見事なもので、前作まで僅かながら感じていたチグハグさが解消され、「きっとこういう遊びをやってもらいたかったんだろうな」という攻略しがいのある内容へと進化しているのを感じられました。
少し長くなりましたが、本作ではサイドビューとトップビュー共に、システムの増改築によって更なる進化・改善が行われています。
一方、こうした変化は後述する難易度の上昇にも繋がっているわけですが……
次元の壁を越え、探索要素はこれまでよりも本格化
さて、もう一つ本作での新要素となっているのが、各地に発生している「次元のひずみ」
「VRVシステム」によってひずみから超次元空間へと入ると、マップやギミックに通常空間とは異なる変化が生じます。
サイドビューでは、時間の逆行によってステージギミックの効果が逆転したり、見えないものが見えるようになったり、地形そのものが変わって新たに進める場所が増えたり。
通常空間と超次元空間を行き来することで進んでいく場面も多くあります。
トップビューでは、主に高難易度の寄り道ダンジョンとして位置づけられるSF<ソフィアフォース>ダンジョン内で発生。
凶悪な警備ロボットがひしめく通常ルートを回避し、超次元空間内の別ルートを進む選択が可能です。
トップビューの超次元空間は先が読めないランダム生成マップとなっていますが、通常ルートの苛烈な攻撃にさらされるよりは安全。どちらのルートを選んでもクリア報酬は変わりません。
もちろん敢えて通常ルートを進むこともできます。
通常ルートを無傷で突破するのは非常に困難ですが、上手く弱点を突いたりカウンターを決めることですり抜けることもでき、スリル満点でこれはこれで楽しかったり。
SFダンジョンをゴリゴリに突破するのに喜びを見出だしてたので殆ど超次元空間を経由しなかったんですよね......
— 紅茶 (@tea_creates) 2021年8月2日
#NintendoSwitch pic.twitter.com/AguprTn65K
自分はランダム生成があまり好みでないこともあり、ほぼ全部通常ルートを通ってました。
これまでは探索が苦手な人にもやさしいシンプルなマップ構造をとっていた本シリーズですが、今作ではこれらの超次元空間の追加によってマップがちょっぴり複雑化しています。
終盤は入り組んだ地形も出てきて頭をひねりながら探索することも。
といっても、目的地はマップに明示されますし、マップデータを手に入れればある程度全貌を把握できるので、そこまで詰まることは無い印象です。
ついにセーブポイント間のワープ機能が付いたり、現装備では進めないところや、新しく通れるようになったところがマップ上に表示されるなど、便利機能も多く追加されました。
ただ、今回から追加された使い捨てのシールドアイテムが従来の強化アイテムと同じアイコンでマップ上に表示されるため、未入手の強化アイテムがどこにあるかわかりにくくなったのが難点ですが……
ある程度目星を付ける方法はあるものの、なんでこうインティは探索要素に関して斜め下を行くんでしょうね。
追記:2021/10/18のアップデートで、アイテムの種類毎にマップ上で色分けして表示されるようになり、上記の問題は改善されました。
アクション難易度も大きく上昇
探索もちょっと複雑になった本作ですが、それ以上に難しくなっているのがアクション部分の難易度。
トップビューのシステム刷新により、『ゼロ1』『ゼロ2』の比較的大らかな調整から武器の使い分けを意識させるしっかりとした攻略を求めるスタイルへと変化したのを一端として、サイドビューパートも含め明らかにこれまでとは一線を画する高難度のプレイングが要求されています。
おなじみの芋虫の進化系をはじめとした厄介なザコ敵の登場に加え、配置自体も多め……というのもありますが、何よりもボスが強敵揃い。
体力ゲージが増えて攻撃も激しくなり、かなり手強くなっています。
特に終盤のボス群は、アクション慣れしている人でも手を焼くことと思われます。
強いのも納得の背景があるのでストーリー展開としては非常に熱く、個人的にはめちゃくちゃ燃えましたけどね……!
一応ちょっとした救済要素として、一時的に最大HPを増やす使い捨てのシールドアイテムが各所に配置されており、即死にも耐えられガンレベルの低下も防げる優れもの。
MAXまで集めればかなり頼りになります……が、それでもキツいとこは普通にキツかったり。
もちろんどのボスにも動きをよく観察したり色々な武器を試すことで突破口が見える楽しさはあり、高難度アクションとしては非常に高いクオリティです。
個人的にも今回の難易度は歯応え抜群でとてもスリリングでしたが、これまでの難易度がちょうどよかった、という人には少し厳しいかもしれません。
ちなみに、今回ジェイソンにホバーが追加されたことで、高所からも安全な着地が可能になりました。
やたらシビアなハシゴアクションなんかは無くなっているので、そこはご安心を。
総評
単純な遊びやすさ・クオリティの話であれば、様々な遊びやすい改良を加えた『ゼロ1』の時点で『メタファイト』を大きく上回るものでした。
しかし偉大な原点を超えるという試みは、単純なブラッシュアップ以上のことをしてはじめて成し得るもの、とも思います。
その点において、ガンレベルのシステムが抱えていた構造的な課題に対する答えを導き出し、新たな魅力を切り拓いた本作は、「原点である『メタファイト』を超える」という意気込みを見事に成し遂げたのではないでしょうか。
もちろん『メタファイト』は知らなくとも、これまで『ゼロ1』『ゼロ2』とシリーズを追ってきて難易度の上昇に抵抗のない人なら、まず損はしないはず。
是非最後まで遊んで、物語の結末を見届けていただきたい!
ちなみに今回遊んだのはSwitch版ですが、携帯モードでのプレイ中は時折処理落ちが発生していました。終盤のボス戦などでは負荷が大きいのかゲームスピードに差を感じる場合もあるので、より滑らかに楽しみたい場合はTVモードがオススメです。