心やすらぐ最期に立ち会う。
ゲーム概要
メーカー:Thunder Lotus Games
プラットフォーム:Nintendo Switch / PS4 / Xbox One / Steam ほか
プレイ人数:1~2人
初リリース日:2020/08/18
価格:2,980円(税込)[Switch版]
NIntendo Direct mini の PVを見て一目ぼれしたタイトル。
死者の魂との触れ合いというテーマに惹かれました。
ジャンルはシミュレーション+アドベンチャーといったところでしょうか。
2Dアクション的な要素も無くはないですが、あくまでミニゲーム程度の範囲。
難しくてクリアできないなんてことはなく、落ち着いて楽しむことができるゲームです。
※ちなみに、今回プレイしたのはSwitch版です。
迷える魂を船に乗せ、最期の時まで寄り添い導く
主人公 ステラ と相棒ネコの ダフォディル が目を覚ましたのは、エバードア と呼ばれる不思議な場所。
そこでステラ達は スピリットフェアラー としての使命を与えられます。
その使命とは、
海の島々を巡り、
彷徨える死者の魂を自分の船に乗せ、
彼らに寄り添い世話をして、
やがて彼らが自らの運命を受け入れたとき、
再びエバードアへ連れてきてその最期を見送る……というもの。
日本風に解釈すると、未練を残した霊を成仏させてあげる、といったところでしょうか。
一人と一匹は前任のスピリットフェアラーの最期を見送ると、自らの使命を背負い海へと旅立ちます。
ゲームサイクルとしては、
船で海を渡って島々を探索し、
素材を集めたり、新しい乗客を仲間に加え、
集めた素材を使って船の設備を拡充し、また新たな島へ……
というもの。
合間に乗客たちから、この設備を作ってくれとか、あの島へ行ってほしいというような要望が出るので、それに応えることで物語が進行していきます。
それぞれの人生と向き合う人々
乗客たちはそれぞれ異なる悩みや問題、生前の未練を抱えています。
父との確執に思い悩む女性、
別れた浮気者の元夫を探す老婦人、
自分の思い通りの個展を開くことが未練の芸術家など……
難儀な性格の人物も多く、なかなか世話が焼けます。
姿こそファンタジックで動物的な彼らですが、生前は立派な人間であり、抱える悩みはどれも現実味のあるものばかり。
そんな彼らの悩みを解消することで気持ちよく送り出してやる心あたたかなストーリー……
みたいなのを想像していましたが、実際やってみると死後の世界もなかなか世知辛いというか、思う通りにはいきません。
すっかり思いを遂げて満足げに去って行く者もいないわけではありませんが、基本的に皆どこかに未練や苦しみを抱えたまま、その運命を受け入れるように、あるいは逃れるようにして、エバードアへと向かいます。
悲しいけれど、人が生きて死ぬとはそんなものなのかも……と思ったり。
あまり調べられていませんが、もしかしてプレイによって変化があったりするのかな?
エバードアへと向かう二人(と一匹)きりの小舟の上で、
思いの丈を綴った言葉を聴き、
最後はハグをしてお別れ。
この送り出すシークエンスが演出から間の取り方まで完璧で、毎回目に涙が滲んでしまいます。
船の改築は楽しいけれど、素材の用意はやや作業的
ゲームシステムに目を向けると、主となる要素は海の冒険と船の改築。
最初は小さな船ですが、素材を集めることで船を大きくしたり、新たな設備を建築できるようになります。
設備は大まかに、客室、素材の加工場、農場の3種。
ここに畑を置いて、ここにはキッチン、○○の部屋はその隣……
といった具合に、船上の模様替えをするのが楽しい。
船を改良することで新たな海域に行けるようになることもあります。
少しずつ海図を広げていくのがワクワクしますね。
島と島との移動中も、意外と暇ではありません。
作物に水をやったり、お腹を空かせた乗客に料理をふるまったり、鉄鉱石をインゴットに加工したり、時には釣りをすることも。
海上では特別な素材が手に入るイベントが発生することもあり、見た目とは裏腹に結構せわしないゲームです。
乗客や島で出会った人々からの依頼もどんどん増えるので、なかなか止め時が見つかりません。
設備が増えるとできることが増えて嬉しいわけですが、それはつまり、やらなきゃいけないことも増えるというわけで。
素材を加工する工程ではちょっとしたミニゲームが必要な場合がありますが、作業量が増えてくるとこれが結構めんどくさい。
この辺りのプロセスはもう少し自動化できたらよかったなー、と思います。
まぁそれでも、集めた素材で船が豪華になると嬉しくてやめられません。
設備によって形が違うので、パズルのように組み合わせる楽しさもあります。
翻訳やUIなどに少々気になる部分も
死者の魂を描く都合上、当然彼らの生前の出来事についても語られるわけですが、その辺りはキャラの台詞のみ、テキストオンリーで展開されます。
それも断片的、散発的に語られることが多く、この時点で既にちょっと覚えるのが大変なのですが、それに加えて本作、全体的に翻訳が固いというか、若干ながら日本語が不自然なのですよね。
そのせいか正直、細かい話があまり頭に入ってこないことがあります。
自分がゲーム中でそのキャラと一緒に過ごした時間は、しっかり印象に残っているのですけどね、もちろん。
生前の思い出の地を巡ったり、山に登って瞑想したり、人探しをしたり……
ただ、本作のキャラを理解する上で重要な要素である生前の出来事に関しては少し……いや、かなり記憶があやふやです。
まぁ逆に言うと、ニュアンス程度の理解でもなんとなく演出で感動はさせてくれます。
翻訳の話に戻すと、単純な翻訳漏れなどミスも目立ちます。
言葉が非常に大事なゲームなので、ローカライズはしっかりしてほしかったところです。もったいない。
追記(2023/10/01):
久しぶりに本作を遊びなおしたところ、翻訳漏れについてはその後のアップデートで修正されていた様子でした。
また、シナリオ構造的なわかりにくさだけでなく、物理的に文字が小さくて読みづらい、なんて場面も。
「銅」と「鋼」とか全然見分けがつきません。
大きさだけじゃなく色合いの問題で見づらいこともしばしば。
大きいモニターに映しててもそんななので、Switchの携帯モードだともうかなり文字が潰れちゃいます。
なのでSwitch Lite でのプレイは相当厳しそう。
UI面だと、ボタン操作も独特だったり。
場面によっては、任天堂キー配置でいうところのYボタンが「戻る」だったりするのです。
実際プレイしていると意図はわかるんですが、どうしても戸惑ってしまいます。
他にも、素材生成作業中に前面にNPCが被ってジャマだったり、時々エラー落ちしたりと困った部分も。
幸いオートセーブは行われるので、何時間分も戻されることはない、と思いますが……
追記(2023/10/01):
エラーに関しても、おそらくアップデートで修正されたのか、再プレイでは遭遇しませんでした。
総評
翻訳やUI面の不備、素材加工の面倒さなど、気になる部分もありますが、死者の魂を扱った物語の切なさや演出の美しさ、船を改築し海を渡る冒険の楽しさなどは本作ならではの魅力。
美しい背景やキャラクターの生き生きとしたアニメーションなども大きな見所です。
人生を見つめ、苦しみと向き合う。
そんなちょっぴりほろ苦い、胸がギュッとなるような物語が好きな人にオススメのゲームです。
追記(2023/10/01):
人の死という、非常にデリケートなテーマを取り扱う作品ですが、それに対してこれ以上ないくらい真摯に向き合っている作品だと思います。
苦しい人生だったとしても、最後に寄り添ってくれる誰かがいてくれたとしたら……
それはきっと救いになるのかもしれません。