スピンアウト作品の『白き鋼鉄のX』の発売が近いということで、本編である『ガンヴォルト』のレビューです。
元々は3DSのソフトですが、今回主に取り扱うのはSwitch版。
(追記:2020/6/9)
・ プラットフォームにPS4を追加。
- ゲーム概要
- 『蒼き雷霆ガンヴォルト』とは
- 『蒼き雷霆ガンヴォルト爪』とは
- 無敵の結界で初心者にも手厚いサポート
- アドレナリンMAXでステージを駆け抜けるスコアアタックが熱い!
- 制作陣のシュミで突っ走るシナリオ
- 総評
- おまけ:3DS版との違い
ゲーム概要
メーカー:インティ・クリエイツ
プラットフォーム:Nintendo Switch / PS4
ジャンル:ライトノベル2Dアクション
プレイ人数:1人
初リリース日:2017/8/31
価格:5000円(税別)[パッケージ版] / 4900円(税込)[DL版]
Nintendo Switch版 蒼き雷霆(アームドブルー)ガンヴォルト ストライカーパック│公式サイト
本作は、3DSのDL専用タイトルとして発売されたドット絵2Dアクション『蒼き雷霆ガンヴォルト』と『蒼き雷霆ガンヴォルト爪』のシリーズ2作をまとめてSwitch/PS4に移植したもの。
3DS版と比べて、フレームレートの向上などのブラッシュアップが行われています。
『ロックマンゼロ』『ロックマンゼクス』を手掛けたインティ・クリエイツによる本格2Dアクションというだけあって、なにかと同シリーズと比較されがちな本作ですが、その精神を受け継ぎつつもユニークにアレンジされたスピーディで爽快なアクションを楽しめます。
今回は2本のタイトルについてそれぞれ紹介したのち、シリーズとしての魅力に触れようと思います。
『蒼き雷霆ガンヴォルト』とは
“第七波動<セブンス>”と呼ばれる超能力を持つ者が現れ始めた時代。
巨大企業‟皇神<スメラギ>”の管理によって国内は平穏が保たれていたが、その裏では能力者の拉致や非道な人体実験が行われていた。
反皇神を掲げる私設武装組織“フェザー”に所属する“蒼き雷霆<アームドブルー>”の能力者“ガンヴォルト”が、“電子の謡精<サイバーディ―ヴァ>”の能力者“シアン”と出会うことで物語が始まる……
という、ルビが満載の世界設定は、さすがライトノベル2Dアクションといったところ。
ステージ攻略中も、同時進行でキャラクター同士の掛け合いがあり、物語を盛り上げてくれます。
主人公ガンヴォルトのアクションは、その名の通り銃と雷撃を使ったもの。
まず、銃によるショットを当てて敵をロックオンし……
ロックオン状態で雷撃鱗というバリアを展開すると、必中の雷撃攻撃で敵にジリジリとダメージを与えられます。
一見、ロックオンしての攻撃は二度手間で面倒に思えますが、ロックオン攻撃中も自由に動けるので、回避に専念しつつ一方的にダメージを与えることができるなど独特の楽しさがあります。
雷撃鱗は他にも、実体弾を防いだり、磁力でホバー移動したり、周囲を照らしたりと、用途は様々。
ステージギミックだけでなくボス戦でも雷撃鱗を活用したアクションが多くあり、これ一つで色々楽しませてくれる万能アクションに仕上がっています。
ジャンプやダッシュ、壁蹴りなどの基本アクションの操作感も良好で、レスポンス良くキビキビと動いてくれます。
ここは流石インティ・クリエイツといった出来映え。
そして忘れちゃいけないのがスペシャルスキルの存在。
時間経過でたまるSPゲージを消費することで発動できるド派手なスペシャルスキルは、威力もさることながら発動時に挿入されるカットインがカッコイイのなんの。
こちらが能力者なら敵も能力者。
ボス敵は炎や磁力やワームホールなどそれぞれの第七波動能力を活かした個性的な攻撃をしかけてきます。
それぞれスペシャルスキルも持っており、体力が減ると奥の手として使用してきます。もちろんカットイン演出もあり。
カットインによって「……来る!」という緊張感のあるタメが生まれていますし、スキル自体もダイナミックかつ強力で、避けるのが楽しい必殺技になっています。
ユニークなロックオン&雷撃アクションと、カッコイイ必殺技、そして同時進行で繰り広げられる会話劇で盛り上がる異能力バトル。
それが『蒼き雷霆ガンヴォルト』の基本要素です。
『蒼き雷霆ガンヴォルト爪』とは
2作目となる本作では、ガンヴォルトのライバルである無能力者の少年“アキュラ”もプレイアブルキャラに抜擢され、ダブル主人公となっております。
ちなみに『爪』は「ツメ」ではなく「ソウ」と読みます。
2作目かつダブル主人公ということで、「双」の意も兼ねているのでしょう。
ガンヴォルトのアクションも前作から強化されているのですが、やはり注目すべきは新たに追加されたアキュラ。
ガンヴォルトがショットでロックオンして雷撃鱗、という流れだったのに対し、アキュラは“ブリッツダッシュ”による体当たりで敵をロックオンすることでショットが強化・必中するようになる、という形になっています。
ダッシュは空中でも可能。というよりむしろそっちが本領で、超高速でビュンビュン飛び回れます。
空中ダッシュは通常連続3回までですが、敵にぶつかるか地形に対し斜めにぶつかればバウンドしてダッシュ回数を回復でき、飛行状態を維持できます。
最初は操作に戸惑うものの、慣れてくると高速で空中を飛び、地形を跳ね回りながら敵にガンガン体当たりをしかけて高威力ホーミングショットで瞬殺する、ハイスピードでスタイリッシュなアクションが可能になります。
また、アキュラは無能力者ながら第七波動を再現する独自のテクノロジーを持っており、ボスを倒すとそのボスの能力をコピーして使用することが可能。
ロックオンのON/OFFで性能が異なる能力もあり、後述のスコアアタックでは場面に合わせてどの能力をどう使うか見極めることが重要になってきます。
2人目の主人公アキュラによってよりスタイリッシュなアクションが可能になった続編、それが『蒼き雷霆ガンヴォルト爪』と言えます。
無敵の結界で初心者にも手厚いサポート
このように、ロックオンを軸としたユニークかつスピーディなアクションの本作。
特に、二人目の主人公アキュラはスタイリッシュに動かすには慣れが必要で、難しい印象を受けるかもしれません。
しかしご安心を。本作は初心者やストーリーを楽しみたい人向けのサポートが手厚く用意されています。
不意に攻撃を受けてしまっても、無敵のバリア“電磁結界<カゲロウ>”が自動発動。ダメージを完全に無効化してくれます。
電磁結界の発動には、ガンヴォルトは雷撃鱗に使うEPゲージ、アキュラは空中ブリッツダッシュに使うブリッツゲージをそれぞれ消費しますが、各ゲージは十字キー↓2回入力で即座に全快できます。
…おや? そう、このゲームは十字キー↓を連打しているだけで永続的に無敵になれてしまうのです。
ボス敵の強力な攻撃も、無敵状態で観察すればかわし方が見えてきますし、苦手な技はそのままスルーすることも可能。
終盤には結界頼りでは倒せない敵も現れますが、その頃にはプレイヤーのスキルも向上しているはずなので、頑張れば何とかなる難易度になっています。
どうしてもキツイ! という場合も、レベル上げや装備アイテムの開発で強化が可能。
装備は強力なものも多く、大きな助けになります。
また、ミスしてもこまめに設置されたリトライマーカーから無限にリトライ可能で、さらに低確率でヒロインが“電子の謡精<サイバーディ―ヴァ>”の歌の力で復活させてくれます。
ヒロインの歌をバックにパワーアップして復活するのは、演出としても熱いものがあります。
復活確率は拠点のトークルームでヒロインと会話することで上昇させることができます。
会話パターンも豊富で、戦闘で昂った気持ちをほっこりさせてくれますね。
……というような感じでサポートの手厚い本作。
じゃあアクション慣れしている人にはヌルゲーなのか?
いえいえ、むしろ上級者にこそ楽しんでほしい遊びがバッチリ用意されています。
アドレナリンMAXでステージを駆け抜けるスコアアタックが熱い!
ボスの中には手強い敵もいるので、結界をOFFにするだけでもそれなりの難易度になりますが、さらなる高みを目指す人にオススメなのが本作独自のスコアアタック。
まず、敵にダメージを与えると“クードス”というポイントがたまります。
クードスはためるだけではスコアにならず、リトライマーカーに触れる、スペシャルスキルを撃つ、ステージをクリアする、といった清算行動をとることで、初めてクードスがスコアに換算されます。
クードスは蓄積量が多いほどスコアへの換算倍率が高まるので、たくさんためてから一気に清算した方が多くのスコアが得られます。
しかし、敵の攻撃を喰らうとクードスは清算されずに消えてしまいます。結界による回避もここでは被弾扱い。
また、スコアをたくさん稼いでも規定タイム以内にクリアできなければ減点されてしまうので、スピードも求められます。
つまり、高スコアを目指すには「被弾せず、しかし素早く、クードスをたくさん稼いで一気に清算する」ということが求められます。
それもただクリアするのではなく、道中でボーナスを稼がなくてはいけません。
ガンヴォルトはロックオンにより敵を複数同時に撃破することでボーナスが得られます。
まとめて倒すには敵を生かしたまま誘導することも必要なのでリスクを伴いますが、その分一気に爆破してやったときは気分爽快。
アキュラの場合は着地せずに連続で敵を倒すことでボーナスを獲得。
ノーダメージと飛行状態維持の両立はかなりの精密操作が要求されますが、成功すれば非常にスタイリッシュ。
他にもステージごとに特定条件でボーナスを得られたりします。
何度もトライしてステージやボスの動きを覚え、攻略法を編み出し、それを高速かつ精密に実行する…そのスリルがたまりません。
クードス稼ぎの最中にプレイヤーが得るのはスリルだけでなく、ご褒美も与えられます。
それはずばり、歌。
クードスが1000を超えると、BGMがヒロインの歌に変化し、プレイヤーのテンションをさらに高めてくれます。
そしてステージ最後のボスはスペシャルスキルで倒すとさらに特大ボーナス。
被弾を許さない緊張感と、スタイリッシュに敵を蹴散らし、ステージを駆け抜ける爽快感と疾走感、ヒロインの歌をバックに戦う高揚感に、最後のボス戦を華麗な必殺技でフィニッシュしたときの達成感……この全ての感情を迸らせるスコアアタックこそ、『ガンヴォルト』の真髄です。一度ハマったら抜け出せません。
アクションが苦手な人は歌を聴けないのか、と疑問に思ったかもしれませんが、3回被弾するまで大丈夫なモードや、何度被弾してもクードスが消えないモードも用意されているので安心です。
換算倍率が低いのでスコアアタックには向きませんが。
他にも豊富なクエストもあり、やりこみ要素は非常に充実しています。
制作陣のシュミで突っ走るシナリオ
そんなこんなでアクションゲームとしては非常に完成度の高い本作ですが、シナリオ面は良くも悪くも制作陣のやりたいことが濃縮されており、とにかくプレイヤーの心に爪痕を残してやろうという魂胆が見て取れます。
1作目はきれいにまとまっていて、かつ熱い展開も盛り込まれていて個人的にもかなり気に入っているのですが、2作目の『爪』はサブ主人公アキュラの強烈なキャラ付けや、関係構築の唐突さが否めずやや感情移入しにくいGV側の新キャラ達、終盤の急展開ぶり等にちょっとついていけなくなる人がいるかもしれません。
あの結末自体はわりと好みなんですが、そこに至るまでの過程はもう少しやりようがあったのでは……と個人的には思ってしまいます。
その他のキャラクターも、好き嫌いはともかく敵味方共にアクの濃い人物が多め。
その中でも声優さんの怪演もあって個人的に印象深いのが『爪』に出てくるボスキャラの“テセオ”。
ネットスラング「www」がちゃんと音になっている独特の喋り口調は一聴の価値あり。
でもやっぱりイチオシはヒロイン。
天然で世間知らずな“シアン”や、アキュラの相棒である元気いっぱいのボクっ娘ロボ“RoRo”などのヒロインは、トークルームでの会話量が多いこともあって特に愛着のわくキャラクターになっています。
ヒロインの歌の中では輪廻<リインカーネーション>が印象的ですが、一番好きなのはRoRoの虚空の円環。いや成層圏も捨てがたい……
とにかく全編にわたって制作陣のシュミが色濃く反映されたシナリオ・キャラ付けになっており、合わない人もいるかもしれませんが、ハマればずぶずぶと沼に堕ちてゆく魅力も持っていると言えます。
総評
雷撃鱗や電磁結界、そしてクードスといったシステムの組み合わせにより、本作は「オリジナリティがあり、間口が広く、かつ奥深い」というみんな目指しているけどなかなか難しいものを見事に実現しています。
システムの話が多くなってしまいましたが、本作の面白さはやはりステージやボスの造りが良いからこそ。
地形を覚えてアクションを使い分けるのが楽しいステージ設計や、動きを観察して攻略法を練る面白さと、実際に避ける動きの楽しさとを追求した個性的なボスたち。
こうした部分はロックマンから受け継いだ精神を感じさせてくれますね。
本作はそこにスタイリッシュなアクションと異能力バトルのストーリー、ヒロインの歌などの要素で新たな魅力を生み出しています。
特にアキュラの操作の爽快感は、現代の2Dアクションの一種の到達点とさえ思っています。
初心者へのサポートも手厚い本作ですが、遊べば遊ぶほど面白くなる作品なので、個人的にはアクション上級者にこそオススメしたいですね!
おまけ:3DS版との違い
- 30fpsから60fpsに
- イラスト全般が高画質に
- HD振動に対応
- 立体視、タッチスクリーン操作は削除
- タッチでのスキル・武器選択がなくなった代わりに、右スティックでの操作が可能に
- 1作目にクードスモードの選択機能が追加
- 『爪』DLCを全て収録
- 『爪』オンラインランキング機能は削除
- 『爪』終盤でのある演出が削除。大きな影響はないけどちょっぴりサミシイ